前回は、矯正歯科治療において「抜歯=悪」ではない理由を解説しました。今回は、「子どもの頃の矯正歯科治療」のメリットが大きい理由を見ていきます。

顎の成長を引き出すことで、抜歯を回避できる可能性も

前回の記事で、大人の矯正歯科治療では、骨格の問題で抜歯が必要になる可能性が高い、と書きました。

 

子どもの場合は、少し事情が異なります。子どもの頃に矯正歯科治療を始めると、永久歯を抜かなくてもよくなる確率はぐんと高くなります。

 

子どもが抜歯をせずに矯正歯科治療をするための条件には、乳歯がすべて永久歯に生え換わった頃の歯並びと、顎の成長具合のバランスが関係してきます。乳歯が残っている間に矯正歯科治療をスタートさせ、乳歯がすべて永久歯に生え換わるまでに顎の成長を引き出せるかどうかによって、永久歯を抜かないで矯正歯科治療ができるかどうか、条件を満たす状態が決まってくるのです。

 

子どもは骨自体がまだやわらかく、これから成長を続ける過程にあります。顎の成長期間が多く残っているうちに早く矯正を始めれば、治療によって顎の成長をも引き出すことができます。成長を促しつつバランスを整えていくこともできるため、抜歯をしなくてすむ可能性が高まります。

 

子どもの矯正歯科治療は、大きく分けて2つの段階があります。その1つめは、乳歯列期(乳歯だけの歯並びの時期)と混合歯列期(乳歯と永久歯が生えている時期)を矯正歯科治療する「1期治療」です。それに対し、永久歯がすべて生え揃った状態での治療を「2期治療」といいます。

 

ちなみに、大人は永久歯が揃ってからの治療ですから、大人の矯正歯科治療はすべて「2期治療」のみとなります。

「正しい歯並び」が子どもの才能を伸ばす!?

1期治療は前歯の永久歯が生えた頃に始めるのが一般的で、永久歯が生え揃ったあとのことを考え、顎の骨の成長を引き出すことなども視野に入れた治療を行っていきます。そして、指しゃぶりや口呼吸など、歯並びを悪くする習慣を改善するための指導も行っていきます。

 

実は、矯正歯科治療は一度行っても、生涯ずっとそのきれいな歯並びをキープし続けられるという人ばかりではありません。「2期治療」を終えたあとで、きれいな歯並びが元に戻らないようにするリテーナーという装置を使用していないと、また歯並びが悪くなり、数年後、数十年後に再び「2期治療」をするという人もいます。

 

しかし、子どもの頃に「1期治療」をした人の中には、「2期治療」をする必要がなくなったり、「2期治療」をしても矯正期間が短くて済むという人も多くいます。

 

多感な年頃を口元にコンプレックスなく過ごせるのは、本人にとって喜ばしいことでしょう。また、正しい歯並びは集中力アップやスポーツのパフォーマンスを上げることにも役立つといわれていますので、子どもの才能を伸ばすことにも一役買ってくれるかもしれません。

 

大人になってからでも矯正歯科治療はできますが、子どもの頃に矯正を始めるメリットは、やはりとても大きいのです。

 

そのため、私はひとりの矯正歯科医として、矯正歯科治療が日本でもっとポピュラーになることに加え、デンタルケアの大切さを親から子へ、子から孫へと伝える文化が根づき、矯正歯科治療を「1期治療」から始めることがスタンダードになっていくことを強く願っています。

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