少子高齢化が「グローバル人事戦略」の波を起こす
現在、中国、インド等のアジア諸国の「新興国」が、世界経済における存在感を急速に拡大させています。世界の経済活動を隔てる国境の壁は低くなり、グローバル化の波が日本社会にも押し寄せています。
日本の大手企業は、日本国内で完結するビジネスモデル(ドメスティック企業)からグローバル企業への変化を迫られ、新しいビジネスモデルの確立のため、グローバル人材である「高度人材」の採用に積極的に乗り出しています。
また、日本は人口減少に転じ、今後、本格的な人口減少社会の到来を迎えます。内閣府の「労働力人口と今後の経済成長について」(平成26年3月12日)によると、女性がスウェーデンなみに働き、高齢者が現在よりも5年長く働いたとしても、2013年における6,577万人の労働力人口が2060年には5,400万人程度まで減少すると予測されています。
人口減少・少子高齢化は、国内の高度専門技術者などの労働力投入量の減少を意味しており、日本経済の成長に対する制約要因となります。
世界経済のグローバル化、日本企業の営業利益の「新興国」への依存、人口減少・少子高齢化が大手企業を中心にグローバル人事戦略の波を起こし、それが日本の中小企業へと波及していくことは、もはや必然といえます。
就職活動において、国籍より実力が問われる時代は近い
このような状況の中、日本国内での外国人雇用は年々拡大・加速しています。
以前は、外国人労働者が単純労働などに就き不法就労問題が発生することもありましたが、現在では「採用活動を行った結果、最も優秀な人材がたまたま外国人であった」という理由で外国人採用を行う企業も増加しています。一部の職種では、フィリピンや中国などの外国人従業員が、日本人従業員よりも高給をとっている例もみられます。
就職活動に関して、国籍ではなく実力で勝負する時代が近づきつつあるのです。
その背景には、人口構造の変化、通信技術や交通インフラの発達、そして日本企業の国際化などがありますが、今後は、「少子高齢化」が特に大きなポイントとなるでしょう。同様の問題を抱えるアメリカやドイツなどの先進諸国では、人口構造を維持するために、条件付きながら積極的に外国人を受け入れています。
日本では外国人労働者の受入れに関して様々な意見があるため、積極的な受入れが進むかは未知数ですが、今後も多様な分野で、段階的な規制緩和がなされていくことは十分に考えられます。
とはいえ、外国人雇用の増加がもたらすものはメリットだけではなく、同様にデメリットも発生すると予想されます。デメリットとしては、不法就労や刑法犯などの増加、日本人の雇用機会の縮小、日本人と外国人が二層化された社会を構成するおそれ、などといった点が考えられます。
そのため、外国人の入国や就労には、ある程度の制限を設け、一定の枠内での受入れを実施する必要があるでしょう。その一環として、不法就労助長罪の新設、外国人情報の一元管理など、外国人雇用を取り巻く法整備も着々と進んでいます。
このように、外国人労働者の積極的な受入れには様々な問題が予想される一方で、日本が抱える労働力不足、経済縮小などの状況を考慮すると、外国人の雇用が今後、増加の一途をたどることは明らかです。これからの日本企業にとって、「外国人雇用」が重要な人事戦略の1つとなることは疑いがありません。
そのため、外国人雇用を実施する企業は、コンプライアンスを遵守しながら外国人労働者を受け入れるための適正な社内体制を構築していく必要があります。