理由をつけ、施工中の現場に施主を来させない業者も
工事現場は、仕事として携わっていない限り、一般の人にとってあまりなじみのない場所だと思います。建築資材が置かれ、ときには重機が入り、釘を打ちつける音や工具の音がひっきりなしに鳴り響いています。建築現場は、「家」に命が吹き込まれていくとても大切な場所です。
筆者著書『改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる 』の第1章で、多くの住宅会社は、施主が建築現場で職人や下請けと接点を持つことを嫌う、と書きました。現場に施主が来たときは、極力話をしてはいけないと通達されているケースもあります。中には、「危険だから」などの理由をつけて、施工中の現場に施主を来させないようにするというケースもあるようです。
ハウスメーカーなどの立場からすれば、大工や職人にはなるべく最短期間で細かい変更やクレームの出ないうちに工事を終わらせてもらい、次の現場にとりかかってほしいということでしょうか。先述したように、情報の食い違いが露見するのを防ぐ意味合いもあります。
その場所で永く暮らすのは施主自身
確かに、施主が足繁く現場に通えば、作業の手を止めることもあるでしょうし、質問に答えることや、細かい仕様の変更やミスを指摘されることも考えられます。しかし、それは自分の「家」が、仕様通りに建築されているかどうか確かめたいと一所懸命に願う熱意あっての行動であり、クレームでもなければ邪魔でもないはずです。
施主にとっては当たり前の行動であり、当然の権利ですから、遠慮することなく、どんどん現場に足を運んでください。そしてなるべく工事の早い段階で大工や職人と実際に会話することをお勧めします。
現場は整理整頓されているでしょうか、近隣の道路に作業車両が路上駐車してあったり、建材や工具が隣地にはみ出したりはしていないでしょうか。大工・職人が現場監督の指示をきちんと把握しているでしょうか。そして現場を訪れた施主を歓迎し、会話に耳を傾けてくれる空気が少しでもあるでしょうか。
大工・職人の中には、無口でコミュニケーションが苦手な人もいますが、それとあえて避ける姿勢とは異なります。こちらの質問や、指摘に対して、すぐに仕様書の確認をし、現場監督に連絡を取ってくれるでしょうか。「聞いていない」「今すぐに判断出来ない」「もうすでにやってしまったからやり直しは出来ない」。そんな答えが返ってきたり、近隣住民から苦情が聞こえてくるようなら、現場監督にすぐに報告し改善を求めてください。工事が終了してから、その場所で永く暮らすのは施主自身なのですから。