ネバダ州より「北東側の周辺州」に多い放射性物質
現在、北朝鮮の核実験動向が、全世界の注目を浴びています。そこで今回は、米国における放射能汚染地域について着目しましょう。
原発事故・核実験等による放射能汚染と放射性降下物が、長期的で深刻な医学的影響をもたらすということはよく知られています。当然その地域は人間の住む場所にはなりえず、不動産的な価値はないに等しいと考えられます。したがって、そういった場所での不動産投資は回避すべきでしょう。
では一体、これまで国内で1000回を超える核実験を行ってきた米国では、どこでどのような核実験が行われたのか、またどのような原発事故が起きたのでしょうか?
まずは核実験の影響から見ていきましょう。下記の図表1は、ネバダ核実験場で1951年から1962年までの10年間に行われた、100回以上にも及ぶ大気圏内核実験により地上に落下した放射性物質の分布図です。総出力にして合計2,472ktであり、なんと広島原爆の約165倍となっています。
[図表1]ネバダ核実験場で行われた大気圏内核実験による放射性物質の分布図
ちなみに、原爆が発明されてから今に至るまで、全世界で2000回を超える核実験が行われており、そのうち1000回は米国内で行われています。そのうちほとんどが1963年以降現在に至るまで、地下核実験(1992年9月が最後の実験)と臨界前核実験(1993年以降現在まで)で行われているのです。
ただ初期段階では、大気圏に放射能をまき散らした大気圏内核実験が、10年超にわたり行われていたというから驚きです。
次に、以下の図表2の分布図は、この大気圏内核実験により生成されたヨウ素131などの放射性同位体(甲状腺がんの原因)の甲状腺への蓄積度を示しています。地球の自転・偏西風の関係で、ネバダ州より北東側の周辺州に多く分布しているのが分かります。
[図表2]大気圏内核実験により生成された、放射性同位体の甲状腺への蓄積度
連邦政府(環境省)が米国各地における放射線量の統計データを開示しているので、不動産購入する際に、自ら調査をするべきでしょう。
また、放射線量以外でも、空気・土壌・地下水、等の汚染度合のデータが公表されています。過去から現在に至るまでの放射線量は下記URLで見ることができます。
https://iaspub.epa.gov/enviro/erams_query_v2.simple_query
米国の原子力発電所は、中西部から東海岸に集中
米国内には100基の原子力発電所が配置されていますが、西海岸に断層が多く存在していることから、ほとんどが中西部から東海岸に集中しています。とはいっても、原発老朽化、規制強化、および、シェールガス革命による天然ガス優位等により、2030年までに全米の原発は激減する予定です。
[図表3]現在アメリカにある原子力発電所
カリフォルニア州では、すでに事故で運転停止中のサンオノフレ原発(サンディエゴ)のほか、唯一稼働しているダイアブロ・キャニオン原発(サンルイオビスポ)も、2025年までに廃炉が決定しています。過去には、規模の大きいもの、小さいものも含め、以下のような原発事故が起こっています。
1970年 ミシガン州ビッグロック・ポイント原発
1972・1986年 バージニア州サリー原発
1979年 ペンシルベニア州スリーマイル島原発
2002年 オハイオ州デービス・ベッセ原子力発電所
2012年 カリフォルニア州サンオノフレ発電所
この中でも特に注目したいのは、ニューヨークとワシントンDCの中間地点にあたる、ペンシルベニア州ハリスバーグ郊外にあるスリーマイル原発で1979年3月に起きた、炉心融解(メルトダウン)事故です。
この事故では、事故収拾までの4日間、放射能が漏れた可能性があるとされましたが、連邦政府側は問題ないとしました。また、健康被害との因果関係は認められないともしましたが、ピッツバーグ大学公衆衛生調べによると、事故以降1998年までの間に、原発周辺16km圏内の住民の、肺がん・白血病による死亡者数の増加が認められました。
さらにこの事故では、デブリの取り出しに10年以上かかり、1000億円以上の廃炉費用を要しました。
これらのことから、逆説的にいえば、米国においては西海岸が極めて放射能汚染からは隔離されていると言えましょう。