不安に感じていることをノートに書き出す
ファイナンシャルプランナーとして、日々お金に関する相談を受けるなかで、いきなり「私の老後は大丈夫でしょうか……」という相談をされる方がいます。
筆者は占い師や霊能者ではないので、目の前に座った方の未来について、生年月日を聞いただけで、すべてお見通しというわけにはいきません。
プロとしては、相談者の悩みに答えるために「不安の根源」を探し出し、それを取り除くお手伝いをしなければなりません。相談する側が、自分が置かれている状況をよく理解しており、それなりに知識を持っていれば、やりとりはよりスムーズで深いものとなります。
私がオススメしているのは、専門家に老後の生活設計について相談する前に、自分の置かれている状況や、不安に感じていることを、ノートに書き出しておくことです。書き出すことで頭の中が整理され、「何を聞きたいのか」が明確になります。
専門家と会えたものの、雑談が盛り上がって話が横道にそれてしまい、結局、聞きたかったことが聞けなかった、というケースがよくあるのです。あらかじめ悩みをノートに書き出しておいて、それを参照しながら聞いたことをメモしていけば、解決策一目瞭然です。「そういえば、あれを聞きにきたんだった……」と後悔することもなくなるでしょう。
反対に、あやふやな状態で相談に行くと、悪い相手に当たってしまった場合、絶好のカモになってしまいますので、気をつけなければなりません。
相談者を「カモ」と見なしている専門家もいる!?
たとえば、保険会社の営業マンに「60歳くらいで病気になったときに、必要な入院費をカバーできる医療保険に入りたい」と相談したとします。
そんなとき、営業マンに「60歳を過ぎると保険料が高くなるので、いまのうちに加入しておきましょう! ついでに、将来必要となる葬儀費用をカバーできる死亡保険にも入りましょう。いまが保険に入るラストチャンスですよ!」などと畳みかけられると、つい納得してしまうのです。
言いくるめられた結果、入院給付金が入院1日あたり5000円給付され、亡くなったら300万円を受け取れる保険に入ってしまい、月々の支払いが3万円を超えてしまったという方がいます。医療保険だけで良かったのに、死亡保険にも加入したことで、保険料が非常に高額になってしまったのです。
また、「老後にかかるお金が不安。低金利では預金が増えないのでなんとかしたい!」という漠然とした悩みを抱えたまま、銀行に駆け込んだ方は、誠実そうな担当者に「投資信託というものがあり、比較的安定して運用できるので、購入してみませんか?」と誘われ、思わず投資してしまうことがあります。
ところが、後に現金が必要になって解約を申し出たところ、投資信託は元本割れを起こしており、解約すると相当な損失を被ってしまうことがわかりました。加入を勧めてきた誠実そうな担当者に聞きたいと思っても、いつの間にか他の支店に転勤になっていたのです。
このように、相談者をカモと見なしている専門家のペースに乗せられて、不本意な結果になってしまわないように、事前に「自分は何が不安なのか」、「どうなったら満足なのか」を、紙に書き出して検討しておいてから、専門家に会いに行くことをオススメします。