病気にかかったときの治療の選択肢を広げる医療保険
誰しも高齢になると、病気にかかるだけではなく、つまずくだけで骨折につながってしまうなど、医療費が気になってきます。
それを見越してか、60歳前後から、老後に備えての医療保険への新規加入や見直しを考える人が急増します。このときに検討しなければならないのが、次に挙げるような具体的な給付内容です。
●入院給付金は何日以上入院すると受け取れるのか?
●入院給付金は1日あたりいくら出るか?
●何日分まで入院給付金を受け取れるか?
●手術給付金はいくらもらえるのか?
●がんや生活習慣病での入院に上乗せがあるか?
●診断給付金はあるか?
ちなみに、近年の医療保険は、日帰り入院や日帰り手術でも入院給付金が受け取れるだけではなく、「三大疾病(がん・脳卒中・心筋梗塞)」などの診断給付金も、間を空ければ複数回受け取れるものが主流になりつつあります。
医療保険は、病気にかかったときの治療の選択肢を広げる役割も果たします。
たとえば、副作用が少ないことで注目を集めているがんの治療法「重粒子線治療」は、国の認可を受けているものの、健康保険の対象外です。全額を自己負担すれば、1セットで数百万円かかると言われていますが、「先進医療特約」が含まれる民間の医療保険に加入していれば、そこから技術料をまかなうことができるので、安心して利用できます。
保険料の支払いが家計を圧迫するのは本末転倒
このように、老後の不安を一掃してくれるかに見える医療保険ですが、問題は、加入時の保険料が年齢を重ねるほど高くなり、家計を圧迫しがちなことです。また、すでに病気を抱えていると、そもそも加入できないケースもあります。「では、持病があっても入れる保険を探さなくては!」と慌てる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、ちょっと待ってください。
焦って民間の医療保険を探す前に、国の保険制度をもう一度確認してみましょう。
すべての日本人が原則として加入することになっている公的医療保険には、「高額療養費制度」というものがあります。「健康保険限度額適用認定申請書」を申請しておけば、1カ月単位でかかった医療費が一定額を超えた場合、超えた金額が健康保険から払い戻されるものです。
たとえば、70歳を過ぎた方(一般)では、所得にもよりますが、暦の上での1カ月あたりの医療費が4万4400円を超えれば、その分は健康保険から払い戻されます。
いかがでしょうか。案外、心配するほどではないと思われませんか?
もちろん、先進医療を受ければ、技術料は患者が全額自己負担することになりますし、入院となれば食事代や、個室に入ることによる差額ベッド代など、諸経費がかさむことにはなります。しかし、ある程度の預貯金があれば「高額療養費制度」と組み合わせてしのぐことが充分可能です。なにより、家計に余裕がない方が、毎月苦労して保険料を払うというのは本末転倒です。保険料の支払いが家計を圧迫してしまうような方は、いまから新たに医療保険に加入する必要はないといえるでしょう。