観光分野、点検、測量などでは既に活用が進む
著:ドローンジャパン株式会社取締役会長/春原久徳
現在、以下の分野が注目されている。これらの分野では順調に活用が進んでいき、本格化していくだろう。
●観光空撮
各地域において、海外観光客(インバウンド)の機運が高まっており、地方創生のテーマとして掲げる自治体も多い。そんな中で、自治体のWebサイトで地域の観光スポットの動画を活用するため、ドローン空撮が広がってきている。
●農薬散布
これまで稲作圃場において、産業用無人ヘリによる空中からの農薬散布防除が行われてきた。ただし、機体の大きさや機体コストの関係で、稲作圃場全体の1/3(50万ha)に留まっていた。
2016年4月にドローンでの農薬散布防除に対するルールが農林水産省から出された。それをきっかけに、残り2/3(100万ha)の稲作圃場への展開が加速してきた。今後、肥料散布や種散布にも広がっていく可能性もある。
●太陽光パネル点検
電気事業法により50kw以上の太陽光発電設備で年1回の法定点検が義務化されており、点検の効率化のため、大型の施設においてドローンによる太陽光パネル点検に注目が集まっている。2015年4月にALSOKが点検サービスを開始したのを皮切りに、1年間で多くのサービスが立ち上がってきている。
●測量
国土交通省は「i-Construction」を2016年度より導入した。建設土木現場の生産性向上に向けて、測量・設計から、施工、さらには管理にいたる全プロセスにおいて、3次元データを活用する情報化の新基準である。
これにより、公共道路土木工事で3次元測量が必要となり、空中からの写真測量にドローンが利用されている。国土交通省はドローン(UAV)での3次元測量を行うためのガイドラインも作成し、ドローン活用を推進している。
2017年は、インフラ点検や搬送でも活躍が期待
2017年に現在の実証実験のフェーズから活用へと移行しそうなのは以下の分野だ。
●インフラ点検
国内で橋梁やトンネルといったインフラの老朽化が進んでいる。2014年に国土交通省は、2m以上の橋とトンネルについて、5年に1度の近接点検の義務化の省令を出した。2m以上の橋は70万に及ぶため、その進捗が緩やかだ。
この問題に対し、3年前より、ドローンを含むロボットでの点検の研究・実証実験がなされてきた。ドローンは橋の下のようなGPSが届きづらい環境では測位や安定の維持が困難という課題があったが、非GPS環境化でドローンを利用する技術が進んできている。
●リモートセンシング
田畑や山林といったエリアで、ドローンにより生育状況や害獣などを把握するリモートセンシングが広がってきている。今後、農業の産業化の流れに伴い、リモートセンシングで得た情報を情報システムに取り入れて農作物の管理に活用する動きが出てくるだろう。
●災害調査
地震や水害が起こった後の災害状況の把握や早期の復旧に、ドローンによる空撮調査が効果があることが分かってきた。今後、自治体でのルール作りや体制作りをどうするかが重要である。
●緊急搬送
ドローンによる搬送に関しては、安全性とコストにまだまだ改善点が多いが、まずは山間部や離島における緊急搬送から進んでいくだろう。
衝突・落下防止など、普及に向けては多くの課題も
普及に向けては、まだ多くの課題がある。技術上の課題としては以下のものがある。
(1)非GPS環境での測位と安定
(2)衝突回避
(3)落下防止
(4)飛行時間(電池の効率化、固定翼・VTOL機の活用)
(5)電波の長距離伝達と安定性
中でも、非GPS環境での測位と安定は、橋梁やトンネルの検査での利用や、倉庫や工場など室内での活用を広げる可能性があるため、期待されている。
制度上の課題としては、航行安全のための免許や機体登録などの整備がある。一方で、活用が広がる分野における手続きを簡便にするなど、規制と緩和の両面の対策が必要になってくるだろう。
そのほか、ドローンはセキュリティに脆弱性があったときの問題も高い。人および機体の認証や、通信の乗っ取り対策、データのハッキング対策など、セキュリティ関連の技術や制度の充実が重要だ。