今回は、「国内ドローンビジネス」の現況を探ります。※本連載は、ドローン・ジャパン株式会社取締役会長の春原久徳氏、近畿大学教授の山崎重一郎氏が著書として名を連ねる『インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場』(インプレスR&D)の中から一部を抜粋し、AI、ブロックチェーン、VR、コネクテッドカーやドローンなどのキーワードをもとに、最新テクノロジーの現在を解説します。

空撮、物流、IoTxドローン・・・3つの機能を併せ持つ

著:ドローンジャパン株式会社取締役会長/春原久徳

 

2016年現在、ドローン産業は黎明期であり、まだ本格的なビジネスが立ち上がっているとはいえない。しかし、さまざまなエリアで少しずつ、実証実験を超えて活用が始まってきている。

 

<ドローンの用途>

 

まず、ドローン産業とはどんな産業なのかを見ていきたい。ドローンビジネスを考えるには、3つのドローンの機能の理解が必要である。

 

(1)空撮:これは一番分かりやすいドローンの機能である。CMや映画、ジャーナリズムなどで使われる。海外では不動産空撮が一つの産業として成り立っており、日本でも一部の建設前のマンションで眺望撮影への活用が見られる。2016年ごろから日本で動きはじめているものに、インバウンドのWebマーケティングに向けた観光地の空撮動画がある。

 

(2)物流:アマゾンが2014年末にドローンによる配送プランを掲げて話題になった。日本では2015年11月に安倍首相が「早ければ3年以内に、ドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」といった政府目標を設定した。各地域で実証実験が行われている。

 

(3)IoTxドローン:空中からのデジタルスキャニングである。空撮ではあるのだが、どちらかというとデータ活用に重きが置かれているものだ。IoTxドローンとしての活用が、土木現場や検査、農業といった分野で広がってきている。

 

インターネットが普及してからは、IT関連(PCやスマホなど)の技術や産業が広がっていく初期段階で、個人ユーザーを主体としたコンシューマーが大きな役割を果たすことが多い。まずコンシューマーの間でデバイスが広まり、それによってアプリケーションやサービスが開発・実装され、拡大していくという流れだ。

 

さらに、一般消費者向けに広まったIT製品やサービスを企業の情報システムで利用するというコンシューマライゼーションも起きる。

 

ドローンに関しても、2014年ぐらいまでは、趣味の空撮目的のユーザーを中心とした流れがあった。しかし、2015年の首相官邸へのドローン落下事件をきっかけに、ドローンの飛行に関する規制の必要性が問われるようになった。

 

2015年12月には、航空法が改正され、ドローンの飛行ルールや飛行区域が定められた。業務でドローンを活用する企業にとっては、ルールが定まり飛行申請と許可といったプロセスができることで、活動がしやすくなった。

 

一方で、対象の範囲が200g以上の機体となったこともあり、個人ユーザーにとっては飛行に制限がかかることになったことは否めない。これは日本に限ったことではなく、世界中で同様なルールが決められていく動きがある。その中で、産業の中心は一般消費者から業務用途にシフトしてきている。

2020年度には「1138億円」もの市場規模に!?

業務用途でドローン産業が形成されていく中で、その構造は以下の図表1の形になってきている。この構造の中で各プレイヤーが動くことで産業が成り立っていく。

 

[図表1]ドローン産業の構造

出典:筆者作成
出典:筆者作成

 

日本を見ると、空撮サービスなどのドローンの操縦をメインとしたサービスが生まれてきている。一方、欧米諸国に比べて、各ユーザー分野を対象としたサービスやソフトウェアに注力している企業がまだまだ少ないという現状がある。

 

2015年~2020年にかけてのドローン市場規模は以下の図表2の通りだ。

 

[図表2]ドローン市場規模

出典:インプレス総合研究所および筆者調べ
出典:インプレス総合研究所および筆者調べ

 

●2015年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は104億円だった。2016年度には前年比191%の199億円に拡大し、2020年度には1,138億円(2015年度の約11倍)に達する見込み

 

●2015年度はサービス市場が61億円と58.6%を占めており、機体市場が33億円(31.7%)、周辺サービス市場が10億円(9.6%)

 

●2020年度においては、サービス市場が678億円(2015年度比約11倍)、機体市場が240億円(2015年度比約7倍)、周辺サービス市場が220億円(2015年度比22倍)に達する見込み(機体は機体本体、サービスは各分野の直接的なサービス、周辺サービスはバッテリー・保険・スクールなどを含む)

 

以下の図表3がサービス分野ごとの割合の推移である。

 

[図表3]ドローンのサービス分野ごとの割合

出典:インプレス総合研究所および筆者調べ
出典:インプレス総合研究所および筆者調べ

 

サービス市場では、2015年には産業用無人ヘリによる農薬散布やCMや映画の空撮等の一部の市場が確立していた。

 

2016年には、国土交通省が推進するi-Construction(公共道路土木工事における3次元データプロセス化)のためのドローンによる測量や、商用太陽光パネル検査の定期点検義務化を背景としたドローンによる太陽光パネル検査などが立ち上がってきている。

 

今後、非GPS環境化での測位安定技術や群制御技術など、ドローン関連技術の開発・研究・実用化が進み、それが支えとなって橋梁等の検査や精密農業、物流、その他(防犯監視など)のさまざまな分野でドローンが活用され、拡大していくだろう。

 

周辺サービス市場では、機体の稼働台数に比例する形で、保険やメンテナンス市場が拡大していくと予想する。

インターネット白書2017 IoTが生み出す新たなリアル市場

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インターネット白書編集委員会

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