前回は、外貨建て運用の開始前に数値化したい「目標」と「達成時期」について解説しました。今回は、金融資産と「実物資産」を組み合わせて保有すべき理由について見ていきます。

ライフスタイルが変わったら、目標も柔軟に変更を

資産設計のプロセスを実践する上で注意しなければならないのは、目標は変わる可能性がある、ということです。ライフスタイルや考え方、家族構成などが変わったら、目標も柔軟に変更しなければなりません。

 

つまり、一度つくった目標は守らなければいけないものではなく、その時点で自分に最もふさわしいものでなければならないのです。もし自分の気持ちとズレが生じてきたらその時点で修正をしていくことです。いったん決めたことを変更するのに抵抗を感じる人がいるかもしれませんが、変えることを恐れてはいけません。常に自分にとってベストのものにしておくことのほうがずっと大切です。

 

 

投資で収益を上げる方法はいろいろありますが、その源泉はアルファ(α)とベータ(β)の2つに分けられます。アルファとは超過収益のこと、そしてベータとは市場の平均値のことです。

 

例えば、日経平均が10%上昇した時に、自分の投資している株が15%値上がりしたとすると、15%のうち、10%は市場平均から得られたリターン(つまりベータ)であり、5%は市場より高い超過リターン(つまりアルファ)と分解できます。市場平均のリターンはインデックスファンドを使って運用すれば、誰でも得ることができますから比較的簡単です。しかし、市場平均を超えるアルファというのは、簡単には得られません。

実物資産では「歪み」が存在しやすい!?

ファンドマネジャーが運用するアクティブファンドと呼ばれる市場平均を上回る運用成果を目標にしたファンドでも、実際にインデックスを上回る運用成果になっているのは半分程度です。超過リターンを得るためには、市場の「歪み」を見つける必要があります。「歪み」とは誰もまだ気付いていない情報が偏在している状態です。

 

例えば株式市場には多数の市場参加者が同時に情報にアクセスしています。歪みがどこかに発生してもすぐに誰かに気付かれてしまい、超過収益を得る機会が消えてしまいます。このように、金融の世界は効率性が高く、この歪みを見つけることは簡単ではありません。

 

 

歪みから超過収益を狙うアルファというのは、金融商品のようなペーパーアセットより、不動産のような実物資産のほうが得やすいと言えます。取引金額が比較的大きく、また取引コストが高いのと、取引所のような透明性の高い売買の場がないことから、価格に歪みが生じやすいためです。

 

最近、金融の世界で仕事をしていた人が実物投資の世界へ参入するケースが増えています。外資系金融機関で株式や債券のトレードをしていたような人が、不動産売買を手がけるようなケースです。この背景には、実物資産投資のほうがアルファによる収益が多く、リターンを上げやすいということがあると思います。割安に放置されているような収益機会があちこちに存在し、金融の世界にはありえないような効率性の低いマーケットになっているからです。

 

実物資産には、そのようなメリットがある一方、金融商品のようにマーケットで比較的低コストでスピーディに売買できるという利便性はありません。現金化するのに時間とコストがかかりますので、長期間固定してもいい、ある程度の資産を持っている人に限られます。金融資産と実物資産を組み合わせて保有したほうがよいのは、それぞれの投資対象にメリット・デメリットがあるからです。

 

[図表]実物資産と金融資産の比較

本連載は、2014年4月25日刊行の書籍『究極の海外不動産投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
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