本連載は、瑞宝興業株式会社の代表取締役社長で、固定資産税アドバイザーとしても活躍する稲垣俊勝氏の著書、『マンガでわかる「固定資産税破産!!」』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、固定資産税の仕組みに隠された問題点を暴きます。

バブル崩壊後、地価は下がったのに固定資産税は上昇

 

 

 

 

私は、都心の渋谷区に住まいを構え、同時に事務所を開いて不動産賃貸業を営んでいます。固定資産税の納税に関しては、まさに当事者の代表みたいな立場にいるわけです。

 

そんな私が、固定資産税の怪しげなところに気づいたのは二十数年も前のことです。日本経済を潤していたバブルがはじけてしまい、国内に不況の嵐が吹き荒れ始めた頃です。それまで上がる一方だった土地の値段は一気に下落し始め、土地を担保にお金を貸していた多くの金融機関が破綻へと追い込まれました。

 

ここで、世の中の動きと正反対の動きを示したのが固定資産税でした。

 

「何か変だ」というのが最初の印象でした。地価は下がったのに固定資産税は下がることなく、むしろ上昇してしまったのですから。

 

「どんな仕組みになっているのだろう」。正直なところ、私自身も不動産賃貸業という家業を受け継いでそう長くは経っていなかったので、固定資産税そのものへの関心も薄く、多少不思議に思った程度で、それほど真剣に向き合うまでには至りませんでした。

 

しかし、仕事を通じて固定資産税と関わり合う機会が増えてくると、「固定資産税は得体の知れない税だ」と思う気持ちがどんどん膨らんでいきました。そして、調べれば調べるほど、隠された部分に怪しげなものが潜んでいることがわかってきたのです。

課税者にとって都合の良い「財源確保」の道具

まず、固定資産税のもとになっている地価が下がっても、固定資産税はそれに従わないということが、どういったことを示しているのかが見えてきました。

 

固定資産税は、3年に1回の「評価年」と呼ばれる年の元日に、税の基となる資産の評価がなされ、それを基にして価額が決められていきます。そして、その評価については3年間据え置かれてしまいます。

 

これは、個別の固定資産がどのように利用されているのかを毎年限られた評価員で調べていくと膨大な労力が必要となり、経費節減も考えれば3年に1度くらいが適当なためということが自治体のホームページなどでも紹介されています。

 

しかし、自治体の税収の半分以上を占めている固定資産税の価額を決定する評価が、このように軽い扱いで良いのでしょうか。もっと重要なウエイトで扱われなければならないと思うのですが。

 

膨大な数に及ぶ固定資産といっても、自らの管轄内の固定資産のおおよその件数くらい最初からわかっているはずです。また、その評価に必要な評価員数や時間も予想がつくはずです。それならば、それに応じた人員を配置したり評価方法を工夫すればよいだけの話です。

 

もともと、住民の数が増えて土地の分筆が進んだり家屋の数が増えれば、それに対応していかなければならないのは当然なので、人員不足などが言い訳になるはずがありません。逆に、土地が手放されたり廃屋が増えたりすれば、評価員が余ってしまい暇をもてあますとでも言うのでしょうか。

 

評価する資産の件数が膨大だからというのは、じつは理由にはなっていません。そのようなもっともらしく掲げられている理由の裏には、じつは、自治体が自らの財源を確保しておきたいという浅はかな欲望が見えています。

 

つまり、3年に一度の評価替えのときに高く評価しておけば、その評価額がそのまま据え置かれるため、役所にとって3年間は安定した財源が確保されることになります。

 

また逆に、社会状況や経済状況が厳しくなり次の評価年に低く評価しなければならなくなれば、評価年までに減額措置や調整措置を廃止するなど課税者特権を行使して、なるべく税額が下がるのを防げるのです。要するに、自分に都合の良い税額にすることができるというわけです。

 

まさに絵に描いたようなご都合主義です。もし、不況のために事業税などによる税収が減っても、固定資産税を操作すれば財源の確保は可能です。課税者側は、このことをうまく隠しているつもりですが、じつは隠し切れていません。

 

そのほか、どうせ納税者側から見えにくい税ということで、納税者を軽んじた施策であることも透けて見えています。もはや固定資産税という「ちゃぶ台」は、思いっきりひっくり返すしかないのです。

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