養子が1人増えれば、相続税は大幅に減額
相続税は遺産総額が基礎控除額を超えたときに、その超えた価格が課税対象になります。
基礎控除額は3000万円+600万円×法定相続人の数で計算されるため、法定相続人が1人増えるたびに基礎控除額は600万円増加します。また、相続財産が減るため、税率も下がります。
たとえば相続財産が3億円あった場合、
1 相続人が子ども2人のとき
●基礎控除額:3000万円+600万円×2=4200万円
●課税価格:3億円-4200万円=2億5800万円
●相続税額の総額:(2億5800万円×1/2)×税率40% -控除額1700万円×2=6920万円
2 相続人が子ども2人+養子1人のとき
●基礎控除額:3000万円+600万円×3=4800万円
●課税価格:3億円-4800万円=2億5200万円
●相続税額の総額:(2億5200万円×1/3)×税率30% -控除額700万円×3=5460万円
このように同じ財産額であっても、養子が1人増えれば、納めるべき相続税は大幅に減額されるのです。
さらに、相続人が増えると相続税の基礎控除額だけではなく、生命保険金と死亡退職金の非課税枠も増えるというメリットがあります。
民法と相続税法で養子の定義が異なる点に注意
しかし実際は、養子の数を増やせば増やした分だけ節税できるかというと、そうではありません。養子といっても、民法と相続税法では定義が異なります。民法では養子を何人増やしても問題ありませんが、相続税法上は、法定相続人の数に入れられる養子の数に制限があるのです。
相続税法上の養子は、実子がいなければ2人まで、実子がいる場合は1人しか認められません。
これは相続税の負担を減らす目的のためだけに養子を増やし、法定相続人に数に含めることを防ぐためです。
当然、税務調査ではこの点について厳しくチェックされます。養子縁組が「相続税負担を不当に減らすための行為である」と税務署に判断されれば、養子が法定相続人の数に含まれなくなる恐れがあります。
相続人の配偶者や孫を養子にする場合はほとんど問題になりませんが、遠い親戚の子や第三者を養子にする場合は、
「将来的にお墓の面倒を見ることになる孫に、今のうちに墓の管理費用を残したい」 といった、節税以外の目的の合理的な理由を、はっきりと説明できなければいけません。
孫を法定相続人にすると「相続税の2割加算」の対象に
1 孫を養子にする
先ほど述べた「将来お墓の管理を頼みたい」などの理由で、孫を養子にすることは可能です。法定相続人を増やして節税効果が得られるとともに、長い目で見た場合、相続税の支払いを1回分スキップすることができます。
本来であれば孫への相続は「親から子」「子から孫」と、2回の相続を経て行われるものです。その間、たとえ手つかずのまま次の世代に財産を渡したとしても、相続税の課税により財産は目減りしてしまいます。この課税を1回分なくすことができるため、相続財産が大きければ大きいほど、この効果も高くなります。とくに建築物などは時が経つほど劣化して価値が下がってしまうため、受け取る方も早い時期にもらえる方が、より嬉しいでしょう。
ただし、孫を法定相続人にした場合は「相続税の2割加算」の対象になります。
どちらの方が節税効果が高いか、しっかりと計算をして判断しましょう。
2 同居していた嫁を養女にする
実家で家族と同居している子の配偶者、つまり「長男の嫁」などは、義父や義母が介護を必要とする状況になったとき、主たる介護者になる傾向があります。
ところが献身的に介護をしても、血縁関係がないために相続時には法定相続人に含まれません。「遺産がほしくて介護をしていたわけではない」という人も多いでしょうが、苦労や努力に報いてあげたいと感じるのは自然なことです。
そのため、
「介護や生活の面倒を見てくれた嫁に少しでも財産を渡したいから、養女にする」
という理由であれば、税務署も納得します。
節税に繋がるとともに、同居していた子どもと実家を出ていった子どもの間に生じやすい介護問題のトラブルも未然に防ぐことができます。