「女性経営者だから男性に負ける」という思い込み
3.ある自動車整備工場の事例
関東地方の女性後継者から、家業の自動車整備工場の方向性についての相談を受けた。彼女は、実家に戻り自動車整備士として働いているが、事業所の近くにバイパスが開通し、これまでメイン道路であった事業所前の道路の通行量が激減し、それに伴い中古車販売や自動車整備のお客様も減少していた。
自分は女性であるため、何かにつけて男性には負けてしまい、これを打開するにはどうすればよいか悩んでいるとのことであった。
彼女いわく、「男性に比べ押しが弱く、車の販売ができない」「女性というだけで知識や技術がないと決めつけられる」等々、女性のデメリットばかりを列挙していた。
ターゲットを変えれば、弱みを強みに変えることも可能
そこでわたしは、逆に女性でよかったということはなかったのかとお聞きすると、「あなたに任せると、車を丁寧に扱ってくれる、仕事がきれい、値段をぼらない」等々、これまた多く挙げることができた。
しかもその声は、女性ドライバーから寄せられたものが多く、ターゲットを変更することで、他社との差別化ができるという仮説が成り立った。そのため、自社の強みを活かして女性ドライバーをターゲットとした戦略を立案。補助金を獲得してキッズスペースを設けた。
そのほか、会社のマークを女性的なものに変更し、品揃えに関しても女性向けの軽自動車の品揃えをよくするなどした結果、新しいお客様をゲットできた。もちろん売上も順調に回復し、今ではすばらしい業績を上げるようになっている。
後でわかったことだが、自社にとって逆境であったバイパス開通に伴う通行量の減少は、自社がターゲットとする女性ドライバーにとっては、むしろ歓迎すべきことであった。女性にとっては、ダンプや大型車が通る通行量の多い道路よりも、車の出入りが楽な、こちらのほうが大歓迎なのである。
マイナスだと思っていたことも、ターゲットを変えただけでプラスとなることもあるのだ。