これまで気がつかなかった強みを見つけ出す
これまでの人生経験で培ったわたしの再生手法は、決算書の精査に始まり、社長から現場まで徹底的にヒアリングと調査(観察と分析)を行い、そこからその企業にとってベストな処方箋(判断)を提案するというものだ。
このヒアリングと調査には「ありがとう」の気持ちをベースに多くの時間を費やし、これまで気がつかなかった強みや活かしきれていない知的資産を見つけ出し、選択と集中の徹底とKPIの駆使により、営業キャッシュフローを叩き出せるビジネスモデルに生まれ変わらせて、大切な人々の笑顔を取り戻すのである。
これこそが知的資産経営の醍醐味であり、わたしのミッション(使命)であると信じて、日々の仕事に打ち込んでいる。
本連載では、元三代目ボンボン社長が人生のどん底でつかんだ成功哲学と知的資産経営メソッドを駆使して、どのようにして窮境にある中小企業を元気にしていったかの事例を紹介する。
買掛金や未払金に苦しむ豆腐店の事例
1.ある豆腐店の事例
関西のある都市で豆腐製造業を営む会社の話である。
長年、赤字で苦しむ会社であった。国産大豆にこだわり独特の製法と頑固な社長が作る豆腐は、味もよく消費者に人気がある。しかしながら経営は赤字続きで、金融機関への返済は止めてもらってもまだ資金はショートし、買掛金や未払い金が増加する一方で、窮地に追い込まれていた。
社長にお会いしてお話をお聞きすると、もう経営に疲れてしまったとのことで、途中で感極まって涙されるほどであった。できれば会社を清算し、奥様と二人でよその豆腐屋さんで資金繰りを考えずに働きたいと、苦しい会社の経営者なら誰もが抱く本音が出た。
確かに決算書上からも先行きに対する不安材料ばかりが読み取れ、現在の社長の精神状態では再起は難しいと思われるため、次回は一緒に会社を営まれている奥様と息子さんも同席のうえで、最終判断をすることとなった。それまでに奥様と息子さんにも、社長から現状を説明しておくよう依頼し、一週間後にお会いした。
まずは決算書上から読み取れる現状分析を行い、事業継続についての意思確認を一人ずつ行った。社長は前回と同じお気持ちであったが、奥様と息子さんは、取引先には迷惑をかけたくないので、なんとか買掛金と未払い金がなくまるまでがんばりたいというお考えであった。その意志は固く、同席した商工会の経営指導員からの助言もあり、再生に向けての道を模索することとなる。
家族全員で力を合わせて事業を継続するとの覚悟であったため、再度決算書を精査すると、いくつか越えなければいけない課題が見えてきた。
この話は次回に続く。