患者のニーズを探ることが、開業立地を選ぶ際の基本
クリニックの開業立地の選定の基本は、人口比で医師数が少なくニーズのある地域を探すことです。なぜならば、経営のすべてにいえることは、自分が何をしたいかではなく、お客様(患者)のニーズがどこにあるかを探ることだからです。
これは医療業界の話ではありませんが、経営を考えるうえで示唆的な話があります。
若い方はご存じないかもしれませんが、かつて日本の家電業界でビデオ規格戦争というものがありました。現在では、テレビ録画といえばHDD(ハードディスクドライブ)が主流ですが、1980年代にはアナログテープを用いたビデオテープレコーダーが主流でした。というより、ビデオテープレコーダーの発売によって、一般家庭ではじめてテレビ番組を録画できるようになったのです。映像作品のパッケージ化も、レンタルビデオも、みなこのときに始まりました。
ところが、この家庭用ビデオは、当初、家電各社がそれぞれ別々の規格で製品を発表していたために、映像作品のパッケージ化が進みませんでした。どの製品が市場を制するかがわからなかったからです。
しばらく市場争いが続きましたが、そのうちに2種類の規格に収れんされました。ソニーのベータ方式と、日本ビクターのVHS方式です。ソニーのベータは高画質を売りにする代わりに基本録画時間が1時間に限定されていました。VHSは画質は今ひとつでしたが録画時間が2時間ありました。
お客様のニーズに応えたほうが選ばれる
最終的に市場が選んだのはVHSでした。ソニーのベータにおける画質や機能へのこだわりはメーカーの望んだものでしたが、VHSの長時間録画はお客様が望んだものだったからです。当時のソニーは、ウォークマンで名を上げ、面白いものを作るメーカーとして有名でしたが、自社のブランドやユニークさに対するこだわりが、お客様のニーズに応えることを邪魔してしまったのではないでしょうか。
この話は、すべての経営者にとってよい教訓になります。
あなたのクリニックは、その街の人々のニーズに合ったものでしょうか?
患者に求められる医療を提供できるでしょうか?