前回は、医師が診療に集中できる「クリニック」の環境作りを紹介しました。今回は、クリニックの開業・経営にまつわる現状を探ります。

「開業医が廃業などあり得ない」と思う人は多いが・・・

医師の開業は、その他の職種の開業と比べて簡単に考えられている面があります。たしかに医師の場合は、周囲を見回しても開業医になった例がいくらでも見つかります。その一方でそれらの人が失敗して廃業したという話はほとんど聞きません。

 

実際、金融機関の多くは、医師の開業に対しては審査がゆるく、比較的、簡単にお金を貸してくれます。金融機関をはじめとする一般の印象としても、開業医が仕事に困ることなどないと考えられているのです。

 

また、開業医については、経済的な余裕が多く語られています。たとえば、開業医の年収は勤務医の2倍だとか、開業したら時間にもお金にも余裕ができたとか、ワークライフバランスが実現できるイメージがあります。

 

それは決して間違ってはいないのですが、あまりにも安易に開業を考えることには危険が伴います。

医療機関の休廃業・解散は、5年間で3倍!?

一般論としていえば、開業にはリスクがあります。多くの患者が詰めかける人気クリニックであれば経済的な余裕もありますが、そうでない医院も存在するのが事実です。また、患者が集まらずに廃業する医院も、実際には少なからず存在します。

 

帝国データバンクの調査によれば、2015年の医療機関の倒産は25件で、そのうち病院が1件、診療所が15件、歯科医院が9件でした。年間25件ですから、それほど多くはありませんが、2009年には52件を記録したこともあり、決して予断を許すような状況ではありません。

 

また、倒産にカウントされない、医療機関の休廃業・解散という数字を見ると、2014年は347件で過去最多となっています。医療機関の休廃業・解散は、5年間で3倍というペースで急増しており、原因として都市部での競争の激化や、事業承継の失敗などが考えられています。債務超過での倒産ではありませんが、実質的な倒産は増加していると見た方がよいでしょう。

 

開業すれば、それだけで薔薇色の将来が待っているわけではないのです。

本連載は、2017年1月26日刊行の書籍『自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

市川 直樹

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医は慢性的な医師不足で時間外の労働が多く、給与も働きに見合わず、過酷な労働環境におかれています。 一方、そうした状況から理想の医療の実現を目標に開業する医師もいますが、都市圏のクリニックは今や乱立状態にあり…

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