「独自の魅力」は過去のデータ分析からは見つからない
入居者に選ばれる「尖った魅力」を見つけるためには、どうしたらいいのでしょう? 熱心なマーケティングでしょうか? 答えは「NO」です。
なぜなら、私たちが知りたいのは、人の心をひきつける「尖った魅力」が、どんなものかということだからです。それに対して、マーケティングは平均値を求めがちです。しかし、平均値からは、知りたいデータは得られません。
たとえば、人気の色を知りたいと思い、好きな色のアンケートを採ったとします。平均的に人気を得られるのはどんな色だろうかと、人気上位の色を全部混ぜたとしたら、元の色がわからないような汚い色になってしまいます。そのような、本来の意味とはかけ離れたマーケティングが横行していると私は感じています。
よくあるマーケティング手法では、すでに賃貸マンションに暮らしている方を対象に「マンションにどのような機能があればいいと思いますか」といったアンケートを採ることで、対象者の属性に基づいた定量的な調査・分析を行い、ニーズを見いだそうとするものです。この手法は新しい商品が「過去の延長線上」に存在するという前提に立っています。しかし、本当に新しいものは、単なる過去のデータからは見つけることができません。
追求するのは「たったひとりに喜んでもらえる商品」
なぜなら、お客様が「これを求めている」といった目に見える需要があるなら、その商品はすでに実現されているはずだからです。そうではなく、人がぼんやりと思い描いたことはあっても、言葉にはできなかったもの、実物を見せられて初めて「そうだ。これが欲しかったんだ!」といえるような商品、いわば、言語化されている想定を超えた商品こそが、まったく新しい商品となるのです。
ですから、マーケティングは、現在の商品の改良には役立っても、マーケティングによって、これまでにまったくなかった新しい商品を作ることはできないのです。“尖った商品”とは、マーケティング的な「平均値」の発想を超えて、いわば「たったひとりに本当に喜んでもらう」ために作られた商品です。そして、その人が心の底から気に入ってくれたなら、きっと他にも気に入ってくれる人たちがいるはずだと信じて作るものなのだと、私は考えています。