前回は、相見積もりが不可欠な理由を解説しました。今回は、「値引き」で勝負する施工会社の信用性について見ていきます。

値引き交渉を想定して見積りを作成!?

これはお客様の話ですが、とあるハウスメーカーと打ち合わせ中、頼んでもいないのに見積りの金額が30分で50万円ずつ下がっていき、結果的に150万円の値引きをしてくれたというのですが、その車1台分にも相当する金額はどこから来たのでしょうか。

 

原価を積み上げて、正当な利益をのせて算出した見積りであれば、本来その額以下に値引きはしようがないはずです。それが、150万円も下げられるというのはどういうことなのでしょう。

 

もともと高い見積りを出し、その後で値引きをしても採算がとれるようにしているか、ほかの契約者からその150万円分の利益を回収しているかのどちらかです。

 

この業界の慣習として、最初から値引き交渉を想定して見積り金額を出すのが当たり前になっているところもあり、業者が最初に提示した金額のまま契約したら、明らかに損になるケースも多いのです。果たして、初めからそのような駆け引きをしてくる会社を、本当に信用していいのでしょうか。

大幅な値引き依頼は「手抜き工事」を招く危険性も

弊社では、最初から目いっぱい値引いて、駆け引きなしの金額でご提示しているので、そこからさらに引くような値引きのお話は一切できません。高品質な素材を使い、正当な手間賃を職人に支払う。その上で、きちんとした利益を加えて計算した金額ですから、値引きする余地はどこにもないのです。150万円か10万円か、会社によって想定している値引額は異なるので、値引率自体で一喜一憂するのはやめましょう。

 

また、あまり強く値引き交渉をした結果、契約が成立しても、その建築現場で作業をする職人に予算削減のしわ寄せがいきます。正当な報酬が得られないのに、ていねいに手間をかけて作業したら採算が合わないので、手を抜かざるを得ないのです。

 

例えば私もテレビを買うときに、少しでも安くなればと値段交渉をすることがあります。しかし、1万円値切ったからといって、店員さんが店の裏側で段ボールから商品を取り出して、1万円分の部品を外すようなことはしないでしょう。完成品に対しては、安心して「もう少し安くしてよ」と言えるのです。

 

しかし、これから造るものに対しての値引き交渉は危険です。悪意のある会社なら、手抜き工事を行おうと思えばいくらでも可能です。まだ完成していないものに対しての値段交渉は、本当は怖いものだと認識してください。

 

[図表]実際の見積書の一部

本連載は、2017年2月27日刊行の書籍『改訂版 いい家は注文住宅で建てる』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

改訂版 いい家は注文住宅で建てる

改訂版 いい家は注文住宅で建てる

齋藤 正臣

幻冬舎メディアコンサルティング

人生で一番大きな買い物、「マイホーム」。理想のイメージばかりが先行して、見当違いな設計に後悔したり、不本意な金額を払ったりするハメに陥らないために、まずは住宅オーダーの基本を学びましょう。「よい見積り、悪い見積…

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