スイス発祥で、アクティブ運用戦略を得意とするファンドハウス「GAM」。同社の2つのファンドにおいて日本株のポートフォリオマネージャーを務める三戸玲子氏へのインタビュー。第2回目のテーマは「中国経済の減速が日本株に与える影響とは?」。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス銀行)の幾田朋彦氏である。

「Why Japan?」にどう答えているのか?

幾田 つい最近の話になりますが、S&Pが日本の信用格付を1段階下げました。日本株に対する影響は何かありますか?

 

三戸 直接的にはないと思います。私たちが投資をしている企業というのは、日本の国債の格付けとか、政府に頼りきった企業経営というのは一切していませんので、業績には何らインパクトはありません。

 

 

1つ影響があるとすれば、外国人投資家からすると、日本に投資をする場合は、なぜ日本なのかというマクロの視点がまず入ります。例えば、私たちがエジプトの株に投資しようと思ったときに、まずエジプトはどうなっているのかというところかが気になりますよね?ヨーロッパの投資家にとって、日本は非常に遠いところで、何が起きているかわからないので、まず上から見ると。そうすると、財政と人口の減少、この2つは必ず指摘されます。

 

格下げですとか、財政のひっ迫状況が改善しないのは、センチメントとしては良くないですね。私たちは、株式市場を動かす一番のドライバーは、業績だと思っているので、こういった格下げのニュースがあったとしても、それによってポジションを変えるということはありません。

 

幾田 投資家の方々とお話をされるときは、必ずマクロの話から入るのでしょうか?

 

三戸 それは二分されます。日本のことをよく調べているお客様は、そこをスキップして、私どもの運用手法についてご説明するところから始まります。日本にあまりなじみがないお客様は、「Why Japan?」と聞いてくるので、まず日本の今の状態をご説明します。日本企業の業績が、金融危機が起きる前の状態よりも良くなっているということをお話すると、感心されることもしばしばです。

 

日本人から見ると当たり前だと思っていることもヨーロッパでは認識されていないことが多いので、そういった情報のギャップを感じることは頻繁にあります。

日本企業の業績に中国経済が与える影響は大きくない!?

幾田 マクロの話をするときに、日本から見た外部的要因の話になったりしますか? 例えば中国経済の失速などが最たるものかと思いますけれども。

 

三戸 やはり日本企業といっても、経済がこれだけグローバル化しているので、そこは必ず質問がきます。中国経済の減速について言うと、中国関連というだけで一様に売られていますが、実際に私が会社訪問をしていても、まだ中国現地で収益化できている日本企業はそこまで多くはありません。それどころか、中国で今からビジネスを始めようとしている企業も実は多いため、中国で悪材料が出るたびに日本の株価が乱高下する現状に、やや違和感を覚えます。

 

幾田 興味深いですね。国内に軸足を置くことの多い中小型株ならまだしも、グローバル企業が多く含まれる大型株は輸出企業も多いので、中国経済の減速の影響は避け得ないように思えるのですが、そうではないということでしょうか?

 

 

三戸 日本から中国への輸出は全体の20%近くあるので、そのように感じたとしても無理はありません。しかし、中には中国の工場で原材料や部品を加工する目的で輸出されるものもありますので、半分程度はさらにアメリカやヨーロッパ等に輸出されるのが実情だと言われています。つまり、日本企業の業績は中国に左右されやすいように見えますが、実はアメリカとか、ヨーロッパの影響が見かけ上の数字よりも高いのではないかという分析もできるわけです。

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたので、GAMおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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