スイス発祥で、アクティブ運用戦略を得意とするファンドハウス「GAM」。同社の2つのファンドにおいて日本株のポートフォリオマネージャーを務める三戸玲子氏へのインタビュー。第4回目のテーマは「アクティブ運用のマネージャーを使うメリットとは?」。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス銀行)の幾田朋彦氏である。

スイスにいながら日本株を運用する理由とは?

幾田 投資家からアクティブマネージャーを使うメリットについて質問をよく受けます。特に最近はETFが数も残高も伸ばしてきておりますので、アクティブマネージャーに対する風当たりは強くなっているように感じております。

 

 

三戸玲子さんの場合ユニークなのが、チューリッヒにいて、そこからリサーチもしていますし、運用もされています。日本株であれば、日本にいた方が良いパフォーマンスを出せるのではないか? ましてや、それがアクティブ運用であれば、なおさらではないかという気がしますが、欧州の投資家から何か言われることはありませんか?

 

三戸 そういった質問は非常に多いです。まず2番目の、スイスにいながら日本株を運用する点についてお答えします。私も長くヨーロッパに住みたいと思っていながら、なかなかそこに踏み出さなかった理由は、日本を離れたら情報へのアクセスが少なくなることを恐れていたからです。しかし、実際に動いてみたら、いくつか発見がありました。まず一番の発見はトップ企業の経営陣に対するアクセスです。

 

中小企業も大企業も、経営陣の素質や考え方に業績が左右されるという点においては同じですが、東京にいたときは、経営陣とお話をしたいと申し上げても、つないでいただける機会はほとんどありませんでした。一様に断られるか、IR担当の方にお会いするのが精一杯です。でも、実は東証が上場企業に出している質問事項の中に、「投資家に直接会って、話をしていますか?」という項目がありまして、当然企業としては「はい」と答えたいと思っています。その一環で、名のある企業の経営陣はヨーロッパやアメリカに出張する際に投資家廻りをすることが多いのです。

 

そうすると、GAMチューリッヒは日本株で3000億円以上の運用規模がありますので、必然的に訪問先の有力候補になります。実際、チューリッヒで初めて経営陣とお会いできた企業もあり、そういう機会というのは、チューリッヒにいなければ得られなかったのではないかなと思っています。

 

もう1つは、私たちは長期投資を目指しており、非常に低いターンオーバー(取引量・銘柄入替の頻度)でポートフォリオを運用しておりますので、そもそも情報の量とかスピードでは競争はしておりません。投資先の企業が、3年後、5年後にどういった姿になるのかということを前提に投資をしているので、東京にいる必要は特にないですね。

 

香港やシンガポールにも多くの投資家やヘッジファンドがたくさんいらっしゃると思いますが、それとあまり変わりないと思っています。私自身も毎日6時半に出社していますので、東京は夏時間であれば午後1時半には電話の前におります。この時間帯であれば、東京のオフィスから電話をかけようが、チューリッヒのオフィスから電話をかけようが、同じことです。

「選択投資」で市場のアウトパフォームを狙う

幾田 今回香港までいらっしゃったのは日本での現地調査も兼ねてとお伺いしました。

 

 

三戸 そうです。日本でも企業訪問を行いましたし、今回はインドネシアに事業を拡大している投資先企業の工場を訪ねてきました。こうした方々に直接お話をお伺いするのは、グローバル企業の動向を把握する上では大事なことです。

 

幾田 アクティブ運用のメリットに関してはどう思われていますか?

 

三戸 アクティブマネージャーを使うメリットに関してですが、ETFに投資すると、基本的にはその国に上場しているすべての企業にポジションを持つことになります。つまり、あまり収益をあげていないような企業にも投資することになりかねません。私たちは業績・質の良い、会社、ビジネスモデルがちゃんとしていて、マネジメントがちゃんと数字を出せるような会社に選択投資をしています。裏を返せば、業績があまり良くないような銘柄を避けることで、市場をアウトパフォームすることを狙っています。相応のメリットはあると言って差し支えないと思います。

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたので、GAMおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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