日本企業の会計不祥事を海外投資家はどう見ている?
幾田 マクロ経済から話題を移しましょう。最近の日本はコーポレートガバナンスの強化に動き出しています。その一方で、オリンパスに続き、日本を代表する企業であるはずの東芝までが不正会計に手を染めていることがわかりました。海外投資家の目にはこのような事件はどう映っているのかが気になるところです。
三戸 海外の投資家から見ると、オリンパスのケースはまだ4年前と記憶に新しいので、東芝の件について、また日本の企業かとは言われました。ただ、これは飽くまで一企業の問題だと個人的には思っています。どこの国でもズルをしようとする会社というのは必ずあるので、それをもって日本のコーポレートガバナンスが効かないというのはちょっと一般化しすぎだと思います。それを踏まえた上で、6月にはコーポレートガバナンス・コードという指針が施行されましたが、これは即効性があると考えています。日本の企業は当局から言われたことは非常に素早く実行に移す傾向がありますので。
幾田 実際にもう数字で表れているのでしょうか?
三戸 そうですね。例えば、「外部取締役を2人採用しなければいけない」といった指針については、2人という風に具体的に書かれているので、実際に取り入れ始めています。私たちの投資先も、ずっと外部取締役ゼロだったところが今回初めて採用しているケースがありますし、コーポレートガバナンス・コードが施行されたことは決して小さな変化ではないと思います。
注目セクターはファクトリーオートメーション関連分野
幾田 コーポレートガバナンスに関してはよくわかりました。続いて、現在注目しているセクター、あるいは逆に、敬遠しているセクターはありますか?
三戸 注目しているのはファクトリーオートメーション(FA)に関わるような分野です。今までは、どちらかというと先進国で効率を上げる目的でFAが導入されることが多かったと思いますが、新興国の人件費は過去何年もの間に年間15~20%近い上昇を経て、もはやローコストの生産地ではなくなってきているところが出てきました。先進国でも新興国でも人を入れ替えて機械化する需要が増えているため、生産性向上を促すFAは成長性が高い分野だと考えております。
幾田 逆にアンダーウェイトしているセクターはありますか?
三戸 私たちは資産が軽い、アセットライトなセクターを好んでいまして、不動産には投資をしておりません。不動産業は景気が良いときは好業績であることが多いのですが、一旦経済成長が鈍化してくると、抱えている資産が評価損の対象になり、思ったようにキャッシュフローを生まないというような状況に陥りやすいからです。それと、コモディティ関連の業種は避けています。商品市況に業績が左右される会社が多く、私たちのリサーチ能力ではリスク管理が難しいというのがその理由です。
幾田 金融も避けていらっしゃるのですか?
三戸 金融は特に避けているということはないのですが、抱える資産が大きいということでは同じですので、銘柄選択には気を遣っています。