会社の税務を任せている顧問税理士は相談しやすいが・・・
多くのオーナー経営者にとって、頭の痛い問題が事業承継です。事業承継の悩みにはいろいろありますが、そのひとつに本書の冒頭でも少し触れた、自社株の相続税対策があります。
儲かっている企業ほど自社株の評価額が高額になってしまい、相続発生時に多額の相続税がかかる可能性が高まります。しかし、中小企業オーナーの資産は通常、ほとんどが自社株であり、キャッシュはそれほどありません。しかも、自社株は売却しようと思っても買い手を見つけることが難しく、融資の担保にすることも簡単ではないのです。
そこで多くのオーナー経営者は、会社の顧問税理士に相談することになります。顧問税理士にはいつも会社の会計や税務を任せているので、相談しやすいのです。
しかし、先に触れたとおり、相続税に詳しい税理士は非常に少ないのですから、自社株の相続税対策について質問されても、はっきり答えられるとは限りません。経営者の方から、「こんなやり方があるそうだがどうだろう」「この方法を使ってみたいのだが……」などと持ち掛けても、「いや、それはリスクがあると思いますね」「税務署に目を付けられるかもしれません」などといってはぐらかすケースが多いのです。
相談すべきはいろいろなアイデアを提供してくれるプロ
税理士は、不慣れなことをやってミスを犯し、顧問契約を打ち切られるのを嫌がります。また、税法は複雑で毎年のように改正され、税理士でもすべて理解しているわけではありません。万が一、ミスがあって損害が発生すれば、損害賠償のリスクもあります。
世の中のことには何事もリスクがつきものですが、大切なのは、正しくそのリスクを評価し、リターンと比べることです。そうしたリスクとリターンについての判断材料を提供できるのが、本物のプロだと思います。
オーナー経営者にとって、事業承継の悩みを相談するべきなのは顧問税理士ではなく、まずはじっくりと話を聞いて問題を整理し、幅広い観点からいろいろなヒント、アイデアを提供してくれるような専門家だといえるでしょう。