前回は、顧問税理士に相続の相談をしても「うまくいかない」理由を取り上げました。今回は、税理士の「得意分野」を見極める重要性について考えていきます。

相続に詳しくない税理士だと納税額が高くなるケースも

前回の続きです。

 

そうしたドタバタのひとつが、相続税の納め過ぎです。

 

日本の国税は基本的に申告納税制といって、納税者が自分で税額を計算して税務署に申告し、納税します。もし、計算などを間違って本来の税額より多く納税した場合は、「更正の請求」によって多すぎた分を返してもらえます。期間は納税期限から5年以内です。特に相続税は納税額が大きく、国税庁の資料によると「更正の請求」によって1件当たり平均1200万円が戻ってきています。

 

なかでも目立つのが、相続資産の中で土地の割合が高い地主さんたちのケースです。相続税の計算にあたって、土地の評価は土地の形状や周辺の状況によって大きく変わるため、多くのノウハウや経験が必要です。

 

ところが、相続税に詳しくない税理士が担当すると、土地の評価を下げることができる要因を見落とし、結果的に評価が高くなり、本来より多くの相続税を支払っているケースが非常に多いのです。

 

みなさんは、病気になったときは内科や外科、眼科などそれぞれ症状に応じて適切な診療科を受診するのではないでしょうか。税金も同じです。相続における土地の評価は、相続を専門とする税理士に頼むことによって、払い過ぎた相続税を取り戻すことができる可能性があります。

相続税の申告業務に慣れている税理士は5%以下!?

そもそも、税理士のうち約半分は税務署OBです。税務署に一定の年数(23年以上)勤めるなどの条件を満たせば自動的に税理士の資格が取れるからです。しかし、その税務署で、相続税と贈与税を合わせた資産税関係に関わる人はそれほど多くありません。3大税収である所得税、法人税、消費税に多くの人員が割かれているからです。

 

試験で税理士になる場合も、簿記論、財務諸表論の必須科目に、所得税法、法人税法など9科目のうち3科目を選択します(所得税法と法人税法のうちいずれか1科目は必須)。そして、相続税のテスト合格者は1割程度といわれます。

 

こうして、相続税の申告業務に慣れているのは税理士全体の5%もいないのではないでしょうか。ましてや具体的な相続税対策となると、どうしていいか分からないというのが多くの税理士の本音だと思います。

本連載は、2016年5月25日刊行の書籍『資産防衛の新常識』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産防衛の新常識

資産防衛の新常識

江幡 吉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の増税、マイナンバー制度や出国税の導入など、資産家を取り巻く状況が年々厳しさを増していくなか、銀行や証券会社が販売手数料を目当てに、「資産防衛のサポート」と称して富裕層に群がっている現状…。資産家が金融営…

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