前回は、不動産による相続税対策は「割高」だと言える理由を説明しました。今回は、資産家・富裕層マーケットを狙った「怪しい新興企業」の事例を紹介します。

老後の安心を謳い、170億円の契約残高を獲得

前回の続きです。問題は金融機関だけではありません。資産家・富裕層マーケットを狙って、怪しい新興企業も続々参入しています。

 

たとえば、金融庁は平成25年10月11日、ある会員制サービスを運営していた会社に対し、6カ月間の業務停止命令を出しました。この企業は前年の10月から「1億円を貯めよう」などのキャッチフレーズで、海外の複数の金融商品を紹介していました。

 

高い利回りにより安心の老後を送ることができると、新聞、雑誌、テレビなどのマスコミにタイアップ記事を掲載するほか、電車の車内広告、駅構内の看板広告、高層ビルのサイン広告など派手な宣伝を行っていました。

 

こうして約2800人の顧客と170億円の契約残高を獲得したといわれます。顧客からは、預かり資産の約1%を手数料として受け取っていました。

「キックバック」を受け取ったことが利益相反に該当

しかし、同社は公平中立をモットーにしていたにもかかわらず、自社にキックバックが入る投資運用会社の運用商品を推奨することで契約額に応じた報酬も得ていました。これが無登録販売にあたり、金融商品取引法に違反すると指摘されたのです。

 

このケースは、中立をうたった会社が海外の投資運用会社からキックバックを受け取ったことが、利益相反に当たるわけです。

 

しかし、実のところ、海外のファンドを紹介している会社などにキックバックが発生しており、タックスヘイブンなどでそれを受領しているということ自体は、以前からまことしやかに言われていました。

 

ただし、そのお金を海外にプールしたままにするのが一般的です。それを行わず、日本に還流したために公になったという点が、少々風変わりな事件でした。

本連載は、2016年5月25日刊行の書籍『資産防衛の新常識』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産防衛の新常識

資産防衛の新常識

江幡 吉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の増税、マイナンバー制度や出国税の導入など、資産家を取り巻く状況が年々厳しさを増していくなか、銀行や証券会社が販売手数料を目当てに、「資産防衛のサポート」と称して富裕層に群がっている現状…。資産家が金融営…

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