前回は、自己破産しても免責されない債務について解説しました。今回は、自己破産した場合も「退職金」を受け取れるのかを見ていきます。

自己破産者の所有財産には「退職金」も含まれる

自己破産した人の所有財産は「破産財団」に組み込まれて債権者に分配されます。所有財産にはその時点で保有しているものだけでなく、将来的に取得が見込まれる財産も含まれ、その代表が退職金です。

 

退職金をどのように計上して「破産財団」に組み入れるのかは、受け取る時期と破産手続き開始時との関係により異なります。

 

① 破産手続き開始時にすでに退職しており、退職金も取得している場合

 

退職金の全額が「破産財団」に組み入れられます。

 

② 破産手続き開始時にすでに退職しているが、退職金はまだ取得していない場合

 

退職金の手取り額のうち1/4が「破産財団」に組み入れられます。残りの3/4は債務者が自由に使うことができます。

 

③ 破産手続き開始時にまだ退職していない場合

 

支給が見込まれる額の1/8が「破産財団」に組み込まれます。1200万円の退職金が見込まれる場合、1200万円×1/8=150万円を「破産財団」が取得することになります。ただし、破産後の保有財産として99万円が認められているため、その額を差し引かれます。前述のケースなら51万円が実際に「破産財団」に組み入れられる金額です。退職金から組み入れられる分は毎月の給与から複数回に分けて差し引かれます。

自己破産したことが周囲に知られるケースとは?

自己破産したことが周囲に知られることはほとんどありません。「官報」により公に告知されますが、見ている人はほとんどいないので、そのためにバレたというケースは私も多数の案件を扱ってきた中で、見聞きしたことがありません。

 

もっとも可能性が高いのは家を失い引っ越すことにより、わかってしまうことでしょう。ただしこれも自己破産前に任意売却を行い、購入者と賃貸借契約を結ぶことができれば、回避できます。

 

職場に知られることもほとんど考えられませんが、唯一可能性があるのは、退職金を「破産財団」に組み入れられる際に、「退職金の見込額算定の請求」を会社に行う時でしょう。経理に勘の鋭い人がいれば、「自己破産したのでは?」と感づかれてしまうことがあり得ます。ただし、住宅ローンを組む際にも「退職金の見込額算定の請求」を行う場合があるので、「不動産を買おうと思っている」などと誤魔化すことは可能です。

本連載は、2017年2月13日刊行の書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

住宅ローンが払えなくなったら読む本

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著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

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