サービス内容、スタッフとの相性が合わない場合も
多くのサ高住には、介護施設が併設されています。通うのが容易だったり、体調の急変などに迅速に対応してくれそうなので、ほとんどの人はそのことをメリットと考えるようです。
介護サービスとして比較的頻繁に利用されるものに、通所介護と訪問介護があります。
通所介護(以下デイ)は、要支援1認定以上のシルバー世代が可能な限り自宅で自立した日常生活をおくることができるよう、デイサービスセンターなどへ通い、食事や入浴などの日常生活上の支援や、レクリエーションサービスなどを日帰りで提供するものです。
シルバー世代は自宅で孤立しがちですが、デイに通うことで、数多くの人と交流が持て刺激を受けることもできます。
昨今のデイが提供するレクリエーションは多種多様です。体操や歌などはもちろん、ヨガ、岩盤浴、マッサージ、ビリヤード、麻雀といったように、たとえシルバー世代でなくても十分楽しめる新しいサービスが各デイから次々と提供されています。要支援1以上に認定されていれば、これらを1割の負担で利用できるのです(上限額あり)。
また最近は、介護保険対象外のサービス、いわゆる自費サービスへのニーズも高まっています。たとえばあるデパートでは、高価な食器の取り扱いや冠婚葬祭の知識、接客マナーを身につけたスタッフが散歩や通院の付き添い、話し相手になるといったサービスまで提供しています。
より良いサービスを受けられるならばたとえ高額でも構わない、という人は意外に多いのです。その結果、介護保険対象外のサービスを提供する会社に質の高いスタッフが集まっているようです。
そこで想像してみてください。併設のデイに通って果たして楽しいでしょうか?
人の好みは十人十色。さらに、その日の気分によってやりたいことは変わってきます。それにもかかわらず、併設のデイだけに通うことは、ときには苦痛に思えるかもしれません。
それにスタッフとの相性もあります。気の合わないスタッフがいるところには、いずれ行かなくなり、引きこもりの原因にもなります。
ならば外部のデイへ通うという手もありますが、周りの入居者が揃って併設のデイに行っているのに自分だけほかへ通うのは気が引けるというケースがほとんどのようです。実質的には選択肢がないのです。
訪問介護にも同様のことがいえます。訪問介護とは、要支援1以上の人ができる限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、食事・排せつ・入浴や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活の支援を行うサービスです。
同サービスは訪問介護事業所が行います。同所の質も千差万別。理念や人材の教育・能力、さらにサービス内容もそれぞれです。
また、訪問介護を受けるには、まずケアマネジャーと本人や家族が話し合い、ケアマネジャーが最適な介護サービスの計画書(以下ケアプラン)を作成します。このケアプランの出来不出来が、その後の健康状態を左右するといっても過言ではありません。たとえば、本当はある程度自分でできるのに、掃除や洗濯をやってもらうと身体を動かす機会を奪われてしまいます。つまり、本当に必要な介護を受けられるかどうかはケアマネジャーの質にかかっているのです。
ケアマネジャーのほとんどは、何らかの事業所に属しています。入居したサ高住に事業所が併設されていた場合、ケアプランに沿ったサービスは、その事業所から受けるケースが多くなります。しかし、そのサービスが、個々の入居者に最適なものであるとは限りません。
実際にサービスを行ってくれるホームヘルパーに関しても、そのレベルはそれぞれですし、入居者との相性もあります。また、ケアマネジャー以上に日常的に触れ合う時間が長いので、相性の問題はより重要でしょう。
このようなことから、たとえサ高住に訪問介護を行う訪問介護事業所が併設されていても、それが自分に合っているとは限らないものです。
こだわるべきは、周辺地域の介護・医療施設の充実度
サ高住にとって重要なのは、デイや訪問介護などの施設が併設されていることよりも、個々の入居者が広く自由に選択できるということでしょう。つまり、こだわるべきは周辺に介護・医療施設が充実している立地です。
そもそもデイは送迎車が、訪問介護はホームヘルパーが自宅まで来てくれます。併設の圧倒的優位性はありません。それならば、様々なサービスが選べる立地の方が、併設しているよりも満足度は高いはずです。