前回は、サ高住は「終の棲家」になり得るのかを検証しました。今回は、シルバー世代が生き生きと暮らせる「多世代交流型住宅」の事例を見ていきます。

多世代交流型のマンションを手がけた理由

私たちが提案するグランドマストシリーズは、現在、東京・神奈川・千葉・埼玉、名古屋、京都、大阪において展開しています。現在開発中の物件も含め、その一部を紹介しましょう。

 

<マストライフ古河庭園>

 

マストライフ古河庭園は、私たちがはじめて手掛けた多世代交流型の大型賃貸マンションです。同物件は、サ高住と子育て家族向けの賃貸住宅が同一敷地内にあり、全129戸のうちサ高住部分は62戸で66戸は子育て家族向け住戸(1戸は管理人室)となっています。

 

なぜ多世代交流型マンションを手掛けたのか。それは特定非営利活動法人ZEROキッズとの出会いがあったからです。ZEROキッズは、子育てを支援する団体です。想像力&創造力をテーマに、音楽や演劇、パントマイムなどのワークショップによってイメージと感動を表現につなげる教育活動を続けています。

 

同団体は様々な慰問活動も行っており、東日本大震災の発生後は東北にも行ったそうです。

 

そのような活動の一環として、私たちが最初に運営を開始した府中の高専賃マンションに来てもらったことが、ZEROキッズとの出会いでした。

 

ZEROキッズに参加する子どもたちは、全員が明るく人見知りしないわけではありません。なかには引っ込み思案な子もいます。そのような子でも慰問に来て歌などを披露したあとは、シルバー世代の人たちと活発におしゃべりするのです。

 

また、子どもたちの歌や演劇を見るシルバー世代の方も心からうれしそうに見えました。なんだか柔らかい空気が流れて、自然と微笑ましいコミュニティが形成されてゆくのです。

 

この環境はシルバー世代だけでなく、子どもにとってもいい。そう感じて多世代交流型のマストライフ古河庭園を企画しました。

子どもたちの活動が、シルバー世代にも刺激を与える

その効果は想像以上でした。たとえば、ある年のクリスマスイブにクリスマスパーティーを開催したときのことです。その会のメインイベントはプロの歌手によるクリスマスソングのコンサートでしたが、途中で入居者の子どもたちによるハンドベルの即興演奏がありました。

 

慣れない手つきで途切れ途切れに演奏する子どもたちを見て、シルバー世代の入居者はほっこりとした笑顔になり、1曲目が終わったときは大きな拍手が沸き起こりました。

 

そのあともプロによる歌が続き、最後にディズニーの大ヒット映画『アナと雪の女王』のテーマ曲が始まりました。

 

そのときです。ピアノのイントロが聞こえるやいなや、隣のキッズルームで遊んでいた十数人の子どもたちが、一斉にコンサート会場へ駆け込んできたのです。会場は満席状態だったのですが、シルバー世代の観客たちはニコニコしながらスペースを空けていました。その光景があまりにも自然で、私は少し驚いてしまいました。

 

私も含めて、その場に居合わせた人たちみんなが一つになった感覚を今でもありありと覚えています。「やはり多世代交流型は間違いなかった」、そう思えた瞬間でした。

 

[図表]マストライフ古河庭園

 

●物件概要
建物完成 2012年2月

 

●所在地
東京都北区

 

●交通
東京メトロ南北線「西ヶ原駅」徒歩4分
JR京浜東北線「上中里駅」徒歩8分
JR山手線「駒込駅」徒歩12分

 

●総戸数
129戸
( 内66戸子育て住戸、62戸シニア住戸、1戸管理人室)

 

●構造及び階数
鉄筋コンクリート造地上7階建て

 

●専有面積
35.84㎡~ 71.88㎡

本連載は、2017年1月30日刊行の書籍『70歳からの住まい選び』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

70歳からの住まい選び

70歳からの住まい選び

小山 健

幻冬舎メディアコンサルティング

最高の住み心地・豊かな人間関係・健康面の安心…生涯充実した人生を送るための高齢者向け住宅とは⁉︎ 一人で住み続けるのは不安…でも、老人ホームには入りたくない。70歳を過ぎた人の、新しい住まい探しの教科書です。

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