
今回は、具体的な空き家管理のうち、建物を長持ちさせるポイントを見ていきます。※本連載は、一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会(会長・米田淳氏、理事・井勢敦史氏・岡原隆裕氏、会員・芳本雄介氏/他)の編著、『空き家管理マニュアル』(建築資料研究社)の中から一部を抜粋し、近年深刻化する空き家問題について、その「管理」の具体的なポイントをご紹介します。
単に通気・換気するだけでは結露対策の効果は出ない
前回に引き続き、空き家管理の建物管理について見ていきます。
③建物を長持ちさせる(財産的価値をできる限り下げない)ためのポイントとその他予防措置
ⅰ)通気・換気
通気や換気などをせずに空き家を放置しますと、結露などによる湿気により建物が傷んだり、カビが生えてそこにシロアリが発生したりすることがあります。
なお、結露が発生するメカニズムは夏と冬とで異なり、建物の構造や部材によっても結露対策は異なります。通気・換気をすることによって結露対策効果が必ずしも発揮されるのではなく、季節や時刻によって変化する環境などに応じた通気・換気方法を採る必要があります。
例えば、夏場のように高温多湿の時期では、日中は換気口を閉じておき、陽が落ちて外気の湿度が下がってから風を通すのが良いとされています。一方、人手に頼らない方法として、換気扇を活用することが考えられますが、換気扇による連続換気は降雨時に室内に湿気を取り込むことになるため逆効果です。
このように、結露の発生を抑える簡単で確実な方法は、屋内外の空気を入れ替える換気ですが、室内に湿気を取り込まないようにし、除湿効果のあるときだけ換気を実施するのは、状況に応じて頻繁に対応することになり、実際に困難であることを認識しておく必要があるでしょう。
排水トラップには時々水を流し、その後は塞いでおく
ⅱ)給湯器の凍結予防
Ⓐ一般的な給湯器本体には、凍結予防のヒーターが付いているため、給湯器に通電しておきます。
Ⓑ給湯器が貯湯タンク式のものは水抜きをします。また、配管の排水も行います(取扱説明書を参照する)。
Ⓒ気温が氷点下に下がることが予想される場合は、水を少しずつ流しておきます。
ⅲ)浄化槽への対処
浄化槽内のバクテリアにブロアーで空気を送り込むため、空き家にするときも通電しておくことが基本になります。また、届出や法定点検、維持管理などもが関係するので、専門業者に対応策を相談しましょう。
ⅳ)排水口の悪臭予防
排水トラップの水が蒸発してなくなりますと、封水が切れて臭いが上がってきたり害虫が侵入したりする恐れがありますので、時々水を流し、その後の蒸発量を少なくするため、ゴム栓がついている箇所(洗面・浴室)などはラップでゴム栓を包んで栓をし、それ以外のところはテープで塞いでおきます。
ⅴ)和室の畳床湿気予防
湿気の予防のため、マンション、戸建てにかかわらず、畳はあげておきます。畳が日焼けで変色するからと表面を新聞紙などでおおうのは、余計に湿気がこもりますので避けます。
ⅵ)建物
Ⓐ外壁のひび割れ、設備の水漏れ(水道を止めていない場合)、雨漏りなどを確認します。
Ⓑ屋内外の水染みをチェックします。特に屋外バルコニーの軒裏など、モルタルの落下につながるおそれのある部分を確認します。
Ⓒバルコニー手すりに笠木がある場合、隙間の有無を確認します。
Ⓓ樋やバルコニー排水口の異物(枯れ葉やボールなど)の詰まりを確認します。
ⅶ)庭
Ⓐ木の切れ端などが落ちていれば処分します。シロアリがそこにすみつき、建物に移動する場合があります。
Ⓑ草刈りや植栽の剪定、落ち葉や投棄物の処分を行います。
建物管理のチェックポイントは、居住者が高齢化するなどして目が行き届かなくなった場合や手が回らなくなった場合などを除き、居住することによって自ずと確認し、解消できるポイントです。
しかし、このような居住している状態と同程度のレベルを空き家管理によって達成しようとするのは現実的ではなく、依頼者の期待する管理の目的とその管理に要するコストを比較検討するなどして、必要な空き家管理のレベルを決定することになります。