今回は、「不動産会社による空き家管理」が地域の活性化につながる理由を見ていきます。※本連載は、一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会(会長・米田淳氏、理事・井勢敦史氏・岡原隆裕氏、会員・芳本雄介氏/他)の編著、『空き家管理マニュアル』(建築資料研究社)の中から一部を抜粋し、近年深刻化する空き家問題について、その「管理」の具体的なポイントをご紹介します。

空き家所有者は「適切な相談相手」を求めている

空き家戸数の増加が止まらない現状において、適切な管理が行われていない空き家は、防犯・防災、衛生、景観等の面から地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしかねません。そこで、安全で魅力ある地域づくりや地域を活性化していくためには、空き家対策が不可欠な要素になり、地域の視点で空き家対策に取り組む必要性が高まっています。

 

空き家管理は、空き家の活用と除却に並ぶ地域の空き家対策の三本柱の一つであり、安心・安全なまちづくりのための危険な空き家の解消と、地域活性化のための空き家の有効活用に至るまでの間に空き家の管理を定着させることが、地域の利益につながります。

 

近年、空き家や空地など不動産の流通による地域活性化という観点から、地域の不動産業者の専門性が、エリアマネジメントにとって必要不可欠であることが徐々に理解されるようになってきました。

 

一方、空き家を所有している人にとって、賃貸運用や売買、管理・承継などは、資産活用の大きな関心事であり、空き家相談や空き家所有者へのアンケート結果においても、「適切な相談相手」となる専門業者を求める声が増加しています。

 

このような場面で、不動産業者は、単に空き家からの出口部分(賃貸、売却、除却)を担うだけではなく、不動産業者ならではの情報の提供や円滑な財産承継に向けた助言、空き家所有者の意向にマッチした適正な管理を行うなど、空き家所有者に向けたワンストップのサービスが提供できます。このことは、地域に根ざす不動産業者として、地域や所有者から信頼を得る一つの方法であると同時に、地域の環境を良好に維持し、不動産事業者のテリトリーとなる地域が魅力ある街であり続けることによる不動産事業環境の維持・向上効果が期待できます。

 

また、ストック活用の観点から、良質な住宅の売却には建物の適正な維持管理が不可欠です。空き家管理に関して高い見識を持ち、適正管理能力のある不動産業者は、「空き家管理のできる不動産業者」として、必要不可欠な存在になったとしても不思議ではありません。

 

【写真 郊外住宅団地】

地域ボランティアによる空き家管理には限界が・・・

地域の空き家管理に取り組むにあたり、『空き家管理マニュアル』では、不動産事業者による空き家管理を前提にしています。

 

空き家の増加は、災害時の対応や犯罪防止を難しくし、景観の劣化やそれに伴う土地・家屋の資産価値の減少は、地域住民の不利益に直結します。自治体にとっても、少子高齢化や空き家の増加は、税収入の減少と都市インフラ整備の負担増をもたらし、各種住民サービスの低下を招きかねないため、空き家管理を含む総合的な空き家対策は地域が抱える重要な課題となっています。

 

空き家管理を実施するにあたって、地域がボランティア等によってその労働・費用の負担を継続して負うことには限界があります。地域に根ざす不動産事業者が空き家管理や空き家対策の担い手となるなど、空き家対策事業に参加し、総合的な空き家対策の実施によって良好で安全な環境を維持し、新しい住民を地域に呼び込むことは、地域の活性化による地域への利益還元となり、不動産事業者の継続的な発展の基盤となることでしょう。

本連載は、2017年1月15日刊行の書籍『空き家管理マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

空き家管理マニュアル

空き家管理マニュアル

一般社団法人 大阪府不動産コンサルティング協会

建築資料研究社

2016年5月26日、「空家対策等の推進に関する特別措置法」が全面施行されるなど、空き家問題を取り巻く状況が変化してきている。 不動産事業者はこの状況にどう立ち向かっていくべきか? 本書は、空き家対策の3本柱「利活用」…

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