「仲介手数料」だけでは賃貸仲介会社はやっていけない
「仲介手数料」と「広告料」とは、言葉は違っても実質は同じです。入居者が決まったとき(賃貸借契約が成立したとき)に、入居者およびオーナーさん(もしくは代理)から賃貸仲介会社に支払われる入居および、入居者獲得の対価(成功報酬)です。
では、なぜこのように同じ性格の報酬に対して二種類の言葉があるのかと言えば、不動産業界を規制する宅建業法という法律に原因があります。その法律の定めるところでは、入居者の成約時の報酬である仲介手数料として、入居者およびオーナーさんから、合わせて家賃1カ月分が上限と定められているのです。入居者が1カ月分を支払えば、オーナーさんはゼロということになりますし、入居者とオーナーさんがそれぞれ0.5カ月分ということもあります。
しかし、合わせて家賃1カ月分の仲介手数料で現在の賃貸市場が回っているのかというと、そうではありません。要するに、その報酬では賃貸仲介会社はやっていけない、ということです。また、現在のような供給過剰時代においては、広告料なし、あるいは半月分といった条件で入居希望者を紹介してくれる仲介会社は多くありません。そのため、実際のところは宅建業法の仲介手数料の規定は有名無実化していると言えます。
広告料は入居者獲得の「必要コスト」と考える
しかし法律は法律として、当然守らなければいけません。そこで、チラシ広告、インターネット広告を行った対価として、「広告料」という名目で各会社は仲介手数料とは別の対価を受け取ることになっているのです。実際にお金をかけ、入居者の募集を行う際に広告宣伝活動を行った分の対価というのが建前上の原則です。そのため、一般的には入居者が支払う報酬が仲介手数料、オーナー側が支払う報酬が広告料として分けられていることが多いのです。なぜなら、入居者募集のための広告宣伝活動を依頼するのはオーナー側だからです。
そして、オーナーさんにとって広告料が有効であるということは先述の通りですが、有効に使うためには広告料の行方に気を付けなければいけません。広告料は入居者獲得のためのコスト(変動費)ですから、入居者を紹介してくれる客付(仲介)会社に支払われることが最低限必要です。
そして、客付けをする仲介会社の報酬が必ず〔広告料+仲介手数料〕を取れる「両手」となるようにしなければ紹介してもらえません。ちなみに、「PM型」の管理を行う当社では、入居者が決まった場合、オーナーさんからは、広告料としてはもらわず、契約事務手数料という形で家賃の0.5カ月分だけをいただくようにしています。
また、オーナーさんが負担する広告料はすべて客付(仲介)会社にいく体制をとっています。これによって仲介会社は必ず「両手」となり、入居者を紹介してくれるのです(図表1)。