(※写真はイメージです/PIXTA)

公的年金は原則65歳から受け取れますが、受給開始を遅らせる「繰下げ受給」を選ぶこともできます。長生きに備えて年金額を増やしたいと考える人にとって、有力な選択肢の一つです。しかし、受給開始前に本人が亡くなった場合、家族が受け取れる年金には一定の制限があります。将来の生活を考えて選んだ繰下げ受給が、思わぬ結果につながることもあるのです。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「75歳になれば年金が増える」夫が譲らなかった受給計画

74歳の和夫さん(仮名)は、妻の良子さん(71歳・仮名)と首都圏の持ち家で暮らしていました。

 

和夫さんはメーカーを定年退職後、65歳まで再雇用で勤務。その後は仕事を辞め、趣味の家庭菜園や旅行を楽しんでいました。

 

65歳時点での年金見込額は月約18万円。老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた金額です。

 

しかし、和夫さんは65歳になっても年金を請求しませんでした。

 

「75歳まで待てば、年金がずいぶん増えるんだ。長生きするなら、そのほうが得だろう」

 

日本の公的年金には、受給開始を遅らせることで年金額が増える仕組みがあります。増額率は1ヵ月につき0.7%で、75歳まで繰り下げると最大84%の増額となります。

 

和夫さんの場合、65歳時点で月18万円だった年金は、75歳まで繰り下げれば単純計算で月約33万1,000円になる見込みでした。良子さんは何度か、早めに受け取ったほうがよいのではないかと提案したそうです。

 

「せめて70歳からでも受け取ったら?」

 

しかし、和夫さんの考えは変わりませんでした。

 

「今は生活できているんだから、急ぐ必要はないよ。75歳になったら、毎月の年金で余裕を持って暮らせる」

 

夫婦には退職金を含めて約3,500万円の金融資産があり、住宅ローンも完済済み。良子さん自身は65歳から月約10万円の年金を受給していました。不足する生活費は貯蓄から補いながら、夫の年金受給開始を待つ方針だったのです。

 

ところが、和夫さんが74歳になった秋、突然倒れて救急搬送されました。その後、容体は回復せず、数日後に亡くなったといいます。

 

「あと少しで75歳だったのに。本人は年金を受け取るのを、ずっと楽しみにしていたんです」

 

葬儀を終えた良子さんは、年金事務所へ相談に行きました。

 

夫は65歳から一度も年金を受け取っていません。過去の分を受け取れないかと考えたのです。

 

窓口で説明されたのは、「未支給年金」という制度でした。ただし、良子さんが請求できる金額には、思いがけない制限がありました。

次ページ「9年分もらえないの?」妻が知った年金の時効

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧