割安な評価と個人投資家が拓く市場の未来
公開価格の水準について、市場のアナリストからは「割安」との評価が寄せられています。地場調査会社のフィルストックスは、今回の公開価格が2026年予想利益の約24.6倍にあたり、海外の類似競合企業平均(31.16倍)を下回っていると指摘。目標株価を9.10ペソに設定し、公開価格から約38%の上昇余地があるとの見方を示しました。当初の目論見書で示された上限価格(1株10ペソ)と比較しても、最終的な価格設定はかなり抑えめだったと言えます。
また、機関投資家の需要の厚みも見逃せません。上場前には、ブラックロックやT・ロウ・プライスなど国内外20社を超えるコーナーストーン投資家(中核となる大口引受先)が参加を表明し、引受総額は365億ペソに上りました。長期資金が事前にしっかりと確保されていたからこそ、初日の売り圧力を難なくこなせたと言えます。
さらに、今回のIPOで最も注目すべきは、個人投資家を巻き込んだ新たな仕組みです。国民的アプリであるGCash上から、最低100株(660ペソ)という少額から直接申し込みが可能となり、約14万人ものユーザーがアプリ経由で参加、合計約11億ペソを投資しました。
GCashの月間アクティブユーザーは約4,150万人に達します。スマートフォンひとつで株式市場にアクセスできる環境は、個人投資家の裾野を劇的に広げる可能性を秘めています。記念式典に出席したマルコス大統領も、小口投資家に門戸が開かれた点を高く評価しました。フィリピン市場は長年にわたり個人投資家の参加率の低さが課題とされてきましたが、今回の事例はその課題を打開する大きな契機となり得ます。
PSEのモンソン社長が「国内株式市場にとって大きな起爆剤」と歓迎したように、Myntは今年PSEで最初の新規上場企業であり、低迷していた同国IPO市場にとって待望の大型案件でした。同日に上場した韓国のAI企業エリスが急落するなど、テック銘柄への目線が世界的に厳しさを増すなか、Myntが底堅い滑り出しを見せたのは、単なる成長期待だけでなく決済インフラとしての確固たる収益基盤を有しているからにほかなりません。
初日を平穏に終えたMynt株の真価が問われるのはこれからです。四半期ごとの業績動向、調達資金を投じる与信事業の健全性、そして外国人投資家の売り一巡が今後の焦点となります。今回のIPOはフィリピン市場にとって終着点ではなく、市場改革の出発点です。巨額の資金流入を一過性に終わらせず、持続的な市場の厚みへとつなげられるか。GCashの株価動向は、その試金石として今後も目が離せません。
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