「来ないでほしいわけじゃない」母が息子に伝えたかったこと
翌週、裕介さんからメッセージが届きました。
「来月の最初の週末、また泊まりに行っていい?」
恵子さんは少し迷ってから電話をかけました。
「遊びに来るのはいいんだけど、今度は泊まらずに帰ってくれない?」
裕介さんは、一瞬黙ったそうです。
「何か予定あるの?」
「予定はないよ。ただ、4人泊まると、次の日けっこう疲れるようになったの」
恵子さんが布団や洗濯、食事の準備について話すと、裕介さんは驚いていました。
「そんなに準備してたの? ご飯なんて買えばいいのに」
その言葉を聞いて、恵子さんも初めて気づいたことがありました。
長男一家から「全部やってほしい」と頼まれたことは一度もありません。恵子さん自身が、帰ってくるなら食事を作らなければ、きれいな布団を用意しなければと考え、長年続けてきたのです。
一方の裕介さんも、母親が毎回それほど負担に感じているとは考えていませんでした。
「息子にとっては、子どものころから住んでいた家ですからね。冷蔵庫を開けるのも、お風呂に入るのも普通なんでしょう。私もずっと何も言わなかったので、それでいいと思っていたんだと思います」
その月、長男一家は土曜日の午前中に来て、夕食前に帰りました。
昼食は裕介さんがテイクアウトを買ってきました。恵子さんはハンバーグを作らず、孫のお菓子を少し用意しただけです。
「夕方に『じゃあね』と見送って、その後に夫と普通に夕飯を食べたんです。すごく楽でした。孫ともちゃんと遊べましたし」
それ以降、長男一家は基本的に日帰りで訪れるようになりました。
泊まるのは年末年始など年に数回。その際も、食事は一度外で食べたり、翌朝使ったシーツを裕介さんたちが洗濯機に入れたりするようになったそうです。
「息子たちが来なくなったら、それはそれで寂しいと思います。だから、来ないでほしかったわけじゃないんですよ。ただ、毎回泊まりにして、私が全部準備する必要はなかったんです」
長く続いてきた帰省の形でも、親の年齢や体力、子どもや孫の成長によって負担は変わっていきます。
これまで通りに続けることが負担になってきたら、訪問の頻度を減らす、日帰りにする、食事は買ってくる、寝具の準備や片付けを分担するなど、方法を変えることもできます。家族が集まる時間を無理なく続けるためにも、その時々の状況に合わせて過ごし方を調整していくことが大切でしょう。
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