(※写真はイメージです/PIXTA)

離れて暮らす高齢の親と電話で定期的に話していても、毎日の食事や家事の様子まで把握するのは難しいものです。本人が「元気だよ」と話していれば、以前と変わらない生活を送っていると思うこともあるでしょう。半年ぶりに81歳の母を訪ねた54歳男性も、台所を見て初めて、電話だけでは分からなかった変化に気づきました。

「お金がないわけじゃないの」母の食卓が変わっていた理由

健一さんが最初に考えたのは、お金のことでした。

 

「年金、足りてる? 必要なら俺も出すよ」

 

すると和子さんは、少しむっとした様子で答えました。

 

「お金がないから食べてないわけじゃないよ」

 

年金は月約13万円。決して余裕が大きいわけではありませんが、家賃はかかりません。預貯金もあり、すぐに生活費に困る状況ではないといいます。では、なぜ食事が変わったのでしょうか。

 

和子さんの話を聞いていくと、一つの理由ではありませんでした。

 

夫が亡くなってから一人分の料理をするのが面倒になったこと。食材を買っても使い切れず、捨てることがあったこと。スーパーへ行く回数を減らしたこと。そして、物価が上がるなかで「自分一人なら、あるもので済ませればいい」と考えるようになったこと。

 

そうした小さな変化が重なっていました。

 

「別に我慢してるつもりはないのよ。一人なんだから、毎日何品も作らなくてもいいでしょう」

 

その言葉を聞き、健一さんも「もっとちゃんと食べて」と繰り返すだけでは解決しないと思ったそうです。毎日料理をするよう求めても、負担が増えるだけかもしれません。

 

そこで親子で相談し、まずは買い物の方法を変えることにしました。

 

米や飲料、調味料など重いものは宅配を利用。冷凍の魚や肉、野菜なども少量ずつ用意し、調理が面倒な日は総菜も使います。

 

健一さんが「総菜でもいいから、もう少しいろいろ食べたら」と言うと、和子さんは笑って、「それならできるかもね」と答えました。

 

その後、健一さんは電話でも「ちゃんと食べてる?」とは聞かなくなりました。代わりに、「昨日の夕飯は何だった?」と具体的に聞くようにしています。

 

「『食べてる?』なら母は『食べてる』としか答えないんですよね。嘘をついていたわけでもない。僕の想像していた『ちゃんと食べている』と、母の考えていたものが違ったんです」

 

高齢期の一人暮らしでは、ある日突然生活が成り立たなくなるとは限りません。買い物の回数が減る、料理が簡単になる、重いものを買わなくなるなど、日常の一部分が少しずつ変わる場合もあります。

 

離れて暮らす家族にとっても、「元気か」「食べているか」という確認だけでは分からないことがあります。何を食べたのか、買い物にはどう行っているのか、以前と比べて負担になったことはないか。本人の生活を尊重しながら、具体的な変化を知ることが、必要な手助けを考えるきっかけになるでしょう。

 

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