半年後に夫婦が出した答え
車を手放して4ヵ月ほど経ったころ、恵美さんの姉が入院しました。
病院は自宅から車なら30分ほど。しかし公共交通機関を使うと、電車とバスを乗り継ぐ必要があります。
何度かタクシーも利用しましたが、今度は「帰りも呼ばないといけない」「何時に帰るか決めなければ」といったことが気になったそうです。
「車だったら、『ちょっと行ってくる』で済んでいたんです。なくなってみて、それが結構便利だったんだと分かりました」
一方、秀一さんも趣味の家庭菜園で使う肥料や土を買うたび、車がない不便さを感じていました。
夫婦が意外だったのは、車を手放したからといって、行けない場所が極端に増えたわけではなかったことです。時間をかけたり、タクシーや宅配を使ったりすれば、大半の用事は済ませられます。
それでも、「出かけよう」と思った瞬間に移動できないことが、想像以上に生活を変えました。
内閣府の同調査では、自分で自動車やバイクを運転する人に今後の運転について尋ねたところ、「視力の低下などにより運転の支障を感じたらやめようと思っている」が41.6%、「一定の年齢になったらやめようと思っている」が38.5%でした。
車を手放して半年。夫婦は再び話し合いました。
「やっぱり、今は車があったほうがいいね」
購入したのは中古のコンパクトカーです。
購入価格だけでなく、自動車税や保険料、車検、ガソリン代など今後の維持費を確認し、家計から無理なく支払える範囲の車を選びました。
「一度手放したことを失敗だったとは思っていません。むしろ、車がないと何に困るのかが分かったので、次はそこを考えて選べました」
今も近所のスーパーには歩いて行くことがあります。駅前へ出るときにはバスを使う日もあります。
車を買い直したからといって、以前のように何でも車で移動する生活へ戻したわけではありません。
「いつか本当に運転をやめる日は来るでしょう。そのときのために、バスや宅配を使う生活も続けておこうと思っています」
車を持つかどうかは、維持費だけで判断できるものではありません。自宅からスーパーや医療機関までの距離、公共交通機関の本数、タクシーや宅配サービスの利用環境によっても必要性は変わります。
また、現在運転できることと、将来も同じ生活を続けられることは別です。車を手放す前に、実際に数週間車を使わず生活してみたり、代わりになる移動手段を確認したりする方法もあります。所有するか手放すかの二択ではなく、将来の変化も見据えながら、その時々の生活に合った移動手段を考えていくことが大切でしょう。
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