辞めようとして初めて分かったこと
久美子さんが仕事を続けようと思った出来事がありました。
67歳のとき、足を痛めて1ヵ月ほどパートを休んだのです。症状は軽く、日常生活に大きな支障はありませんでした。
最初の1週間は「久しぶりにのんびりできる」と感じていたものの、次第に曜日の感覚が薄くなっていったといいます。
夫は午前中に散歩へ出かけたり、趣味の囲碁に行ったりします。一方、久美子さんは洗濯や買い物を済ませると、特に予定がありません。
「別に退屈で耐えられないというほどじゃないんです。でも、『今日は水曜日だから仕事だ』みたいな区切りがないと、毎日が同じになる感じがしたんです」
復帰した日、同僚から「久しぶり。大丈夫だった?」と次々に声をかけられました。常連客からも「最近見なかったね」と言われたそうです。
「そのとき、ここにも自分の生活があるんだなと思ったんですよ」
仕事が終われば、午後は自由です。
友人と会うこともあれば、自宅で本を読んで過ごす日もあります。夫婦で旅行するときは、早めに希望休を出します。
収入にも意味がないわけではありません。
パート代は生活費には組み込まず、自分名義の口座に入れています。美容院代や洋服、友人とのランチなどに使い、残った分は貯めています。
「自分で働いたお金だから何に使ってもいい、というより、家計とは別に自分で管理するお金があるのがうれしいんです」
もちろん、働き続けることがすべての人に適しているわけではありません。久美子さんも体力的に負担を感じるようになれば勤務日数を減らすか、辞めるつもりです。
それでも、今のところは週3日の仕事を手放す理由がないといいます。
「夫は毎日休みでも平気みたいです。でも私は、仕事に行って『おはようございます』って言う日が週に何日かあるくらいがちょうどいい。お金のためだけだったら、たぶん辞めていると思いますけど」
高齢期の仕事を考えるとき、収入は重要な要素です。しかし、働くことで生活に一定のリズムが生まれたり、自宅以外で人と接する機会ができたりする場合もあります。
仕事を続けるか辞めるかは、資産額や年金額だけで決まるものではありません。収入と体力のバランスを確認しながら、自分にとって仕事が日々の暮らしのなかでどんな役割を持っているのかを考えることも、働き方を決める一つの基準になるでしょう。
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