「仲間外れにされたわけじゃない」それでも帰宅後に考えたこと
その後も誕生日会は普段どおり続きました。
帰り際には孫が玄関まで見送り、「おじいちゃん、プレゼントありがとう」と言ってくれました。
電車に乗った俊夫さんは、その日の写真をスマートフォンで見返しました。最初に撮った4人の写真があります。それを見て、「ちゃんと一緒に撮ってるじゃないか」と自分でも思いました。
「誰かに『家族じゃない』と言われたわけでもない。むしろ呼んでもらって、食事も一緒にしている。それなのに、3人の写真を撮っただけで寂しくなった自分のほうに驚きました」
自宅に着くと部屋は真っ暗でした。
妻がいたころは、その日の出来事を2人で話しました。しかし、今は話す相手がいません。
俊夫さんはそこで、誕生日会で感じた寂しさは、写真だけが理由ではなかったのかもしれないと考えたそうです。
妻の死後、自分の日常と長男一家の日常は大きく異なります。
長男には仕事があり、孫には学校があります。一方、俊夫さんは仕事を退職しており、一人で過ごす時間が長くなりました。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、普段親しくしている友人や仲間が「ほとんどいない」「全くいない」と回答した人は合わせて16.1%でした。また、「1週間に1回未満・ほとんど話をしない」という人も6.0%います。
俊夫さんにも、月に数回会う友人や近所で話をする知人はいます。それでも妻を亡くしてからは、家族と過ごす時間への期待が以前より大きくなっていたと振り返ります。
数日後、長男から誕生日会の写真が送られてきました。4人で撮った写真も、長男夫婦と孫の3人で撮った写真も入っています。
「写真、よく撮れてるね」
俊夫さんが返信すると、長男から「来年もよろしく」と返ってきました。
「それを見て、考えすぎていたなと思いました。でも同時に、息子たちの家だけを自分の楽しみにしているのも違うなと思ったんです」
最近は、以前の職場の知人から誘われていた地域の囲碁サークルにも顔を出すようになりました。
内閣府の同調査では、高齢者の日常生活で家族や知人から頼られる内容として、「子や孫の世話」と答えた人は26.0%でした。高齢期にも子や孫と関わりを持つ人はいますが、その関わり方や頻度は家庭によって異なります。
子どもが独立して家庭を持てば、親子であることは変わらなくても、それぞれの日常は別々に続いていきます。家族と過ごす時間を大切にしながら、それ以外にも自分の日常を支える楽しみや付き合いを持っておく。年齢を重ねて生活の形が変わったときには、そうした時間の持ち方を考えてみることも大切でしょう。
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