孫が来ない夏に考えたこと
孫が来ないと決まってからも、美代子さんは、例年なら孫が泊まりに来る時期を空けたままにしていました。カレンダーを見るたび、「去年なら今日は一緒にスーパーへ行っていたな」と考えます。
花火大会の日も、一人で自宅にいました。外から花火の音が聞こえたとき、前年に孫と交わした「また来年ね」という言葉を思い出したそうです。
「別に、孫が悪いわけじゃないんですよ。中学生が夏休みに友達と遊びたいなんて当たり前でしょう。でも私は勝手に、来年も再来年も同じように来ると思っていたんです」
少し寂しさはありました。
ただ、孫が来ない夏を過ごしてみると、それまで孫と過ごす時間が、自分にとってどれほど大きな楽しみだったのかを実感したといいます。
内閣府の同調査によると、親しくしている友人・仲間が「たくさんいる」「普通にいる」「少しいる」と答えた高齢者は合わせて82.7%。一方、「ほとんどいない」「全くいない」は合わせて16.1%です。また、普段人と話す頻度が「1週間に1回未満・ほとんど話をしない」という人も6.0%いました。
美代子さんにも友人はいます。ただ、夫を亡くしてからは自宅で過ごす時間が増え、友人と会うのは月に数回ほど。だからこそ、孫が数日間泊まりに来る夏は、普段とはまったく違う時間になっていました。
夏休みが終わったころ、美代子さんは孫にメッセージを送りました。
「学校が落ち着いたら、ご飯でも食べに行こう」
数時間後、「行きたい!」と返事が届きました。
翌月、娘と孫と3人で外食しました。孫は部活の話や友人と出かけた話を次々に聞かせてくれたそうです。
「泊まりに来なくなったからって、会えなくなったわけじゃない」
美代子さんは、来年から夏休みの1週間を孫のために空けておくことをやめるつもりです。
友人と旅行に出かけてもいいし、以前から興味があった市民講座に参加してもいい。それでも孫から「泊まりに行きたい」と言われれば、そのときに予定を合わせればいいと考えています。
子どもや孫の成長に伴い、家族で続けてきた習慣が変わることはあります。それは必ずしも関係が薄れたことを意味するものではありません。
これまでと同じ過ごし方にこだわるのではなく、数日間の宿泊を食事に変えたり、会う時期をずらしたりすることもできます。相手の生活が変わったとき、自分の時間の使い方も一緒に見直していく。家族それぞれの生活に合わせて交流の形を変えていくことも、長く付き合っていく方法の一つでしょう。
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