「今年は何を食べたい?」孫が来る夏を楽しみにしていた祖母
「夏休みになると、1週間くらいうちに泊まりに来ていたんです」
そう話すのは、一人暮らしの美代子さん(仮名・73歳)です。夫とは数年前に死別し、現在は月約16万円の年金で暮らしています。
一人娘は車で2時間ほど離れた場所に住んでおり、中学2年生になる14歳の孫がいます。孫が小学生になったころから、夏休みには毎年、美代子さんの家で数日から1週間ほど過ごすのが恒例になりました。
娘夫婦は仕事があるため、最初は「夏休みの間、少し預かってもらえない?」と頼まれたことがきっかけでした。
美代子さんにとっても、孫が来る夏は特別でした。
朝は一緒に近所を散歩し、昼にはそうめんを食べる。夕方にはスーパーへ行き、孫が好きなアイスやジュースを買いました。
地域の花火大会へ行くのも毎年の恒例です。
「小さいころは花火の音を怖がって、私の後ろに隠れていたんですよ。それが何年かしたら、『もっと前で見たい』って言うようになって」
孫が帰る日の前夜には、「来年も一緒に花火を見ようね」と話すのがお決まりになっていました。
中学生になって最初の夏も、孫は3泊しました。滞在期間は以前より短くなりましたが、美代子さんはそれほど気にしていませんでした。
「部活も始まったから仕方ないと思っていました。それでも来年も何日かは来るだろうって、普通に思っていたんです」
ところが今年の夏休みを前に、娘から電話がありました。
「今年は、泊まりには行けないかもしれない」
孫は部活動の練習に加え、友人と出かける予定もあるとのこと。さらに塾の夏期講習も始まり、まとまった日数を空けるのが難しくなったといいます。
美代子さんは「そうなの。忙しいね」と答えました。そのときは、それだけでした。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、日常生活で家族や知人から頼られることとして「子や孫の世話」を挙げた人は26.0%。高齢者が子や孫を支える場面は、特別なことではありません。
美代子さんにとっても、もともとは娘を助けるために始まった孫の宿泊でした。しかし10年近く続くうちに、それは「預かる」というより、自分自身が楽しみにしている夏の習慣になっていたのです。
