庭はなくなった。でも増えたものも…71歳夫婦の住み替え後
戸建てを売却し、夫婦は70平方メートル台の中古マンションを購入しました。
決め手は、駅から近く、日常の買い物を徒歩で済ませられること。室内に大きな段差が少なく、生活の中心をワンフロアにまとめられること。そして、庭や建物の外回りを夫婦だけで管理する必要がなくなることでした。
引っ越して最初の春、恵子さんが窓の外を見ながら言ったそうです。
「今年は草取りしなくていいんだね」
正彦さんはその言葉で、住み替えを実感したといいます。
生活も少しずつ変わりました。
以前はスーパーへ行くにも車を出していましたが、今は歩いて買い物へ行きます。夫婦で駅前の店へ昼食を食べに行ったり、電車で美術館へ出かけたりする機会も増えました。
「家が小さくなったというより、外に出やすくなった感覚のほうが大きいですね」
一方、マンションなら住居費の心配がなくなるわけではありません。
区分所有マンションでは管理費や修繕積立金などの負担が継続します。戸建てでは修繕の時期や費用を自分で判断する場面が多い一方、マンションでは共用部分の維持管理に必要な費用を毎月負担することになります。
夫婦も購入前に、物件価格だけでなく管理費と修繕積立金、固定資産税、駐車場を手放した場合の支出減などを含めて家計を確認しました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、可処分所得は22万1,544円、消費支出は26万3,979円。平均では消費支出が可処分所得を上回っており、住み替えを考える際も、購入資金だけでなく、その後の毎月の支出まで確認することが重要です。
正彦さん夫婦の場合、年金月30万円に加えて貯蓄5,200万円がありますが、「資産があるからタワマンでも大丈夫」とは考えなかったそうです。
「戸建てはお金がかからないと思っていたけど、修繕は必要でした。マンションは毎月費用が見える。その違いはありますね」
住み替えて約1年。夫婦は今も、以前の家を懐かしく思うことがあります。それでも正彦さんは、「戻りたいとは思わない」と話します。
「庭がなくなったのは少し寂しいですよ。でも今は、家を維持するために一日を使うことがなくなった。その時間に2人で出かけられるようになりました」
住み慣れた戸建てを手放すことが、すべての高齢世帯に適しているわけではありません。マンションにも毎月の管理費や修繕積立金などがあり、住み替えには購入・売却や引っ越しに伴う費用も発生します。
だからこそ、住まいを考える際には「今の家に住み続けられるか」だけでなく、その家を今後どのように維持していくのか、日常生活にどれほど手間がかかるのかまで確認することが大切です。住まいに生活を合わせ続けるのではなく、これから送りたい暮らしに合わせて住まいを選び直すことも、選択肢の一つといえるでしょう。
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