母の言葉から見直した“物の管理”
健司さんは、その日のうちに「全部捨てよう」とは言いませんでした。
芳子さん自身は困っている様子がなく、買ったものも生活用品が中心です。家の中を歩けないほど物が積み上がっているわけでもありません。
ただ、このまま買い置きが増えれば、必要なものが見つからなくなったり、通路に物が出て転倒につながったりする可能性もあります。
「買い物は普通にできているし、食事も自分で作っている。だから大丈夫だと思っていたんですよ。でも、買い物に行けることと、家に何があるか把握して買えることは別なんだなと思いました」
翌日、2人で収納を一つずつ確認しました。すると、芳子さんにも思い当たることがあったそうです。
「最近、お店に行ってから『あれ、これ家にあったかしら』って思うことはあるのよ。なかったら困るから、買っておこうって」
健司さんは「だったら、買う前に確認できるようにしよう」と提案。日用品の置き場所をできるだけ一ヵ所にまとめ、ストックは原則1つまでと決めました。冷蔵庫の横には、なくなりそうなものを書く小さなメモ用紙も貼りました。
さらに、健司さんは電話の内容も少し変えています。
以前は「元気?」「ちゃんと食べてる?」と聞く程度でしたが、「今日は何を買った?」「洗剤はまだあった?」など、普段の生活が分かる話をするようになりました。
ただし、同じ物を重複して買ったという一つの出来事だけで、認知機能の低下などを判断することはできません。
今後、同じことが頻繁に続いたり、金銭管理や服薬、食事など別の場面にも変化が表れたりした場合には、かかりつけ医などへ相談することにしています。
内閣府の同調査によると、「自分で預貯金の出し入れをしている」人は75.9%、「自分で請求書の支払いをしている」人は74.4%、「自分で食事の用意をしている」人は65.9%でした。
一人暮らしを続けられているかどうかは、「買い物に行ける」「料理ができる」といった一つの行動だけでは捉えきれません。以前と比べて買い方や物の管理が変わっていないか、支払いや食事など別の生活行動にも変化がないかを見ることも大切です。
離れて暮らす家族にとって、電話で「元気」と聞けることは安心材料の一つです。その一方で、久しぶりに会ったときに以前との小さな違いに気づけるよう、本人の生活を尊重しながら普段の様子を知っておくことも、一人暮らしを見守る方法の一つといえるでしょう。
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