「フリーランス法」の適用に関する注意点
いわゆるフリーランス法とは、2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」のことを指します(以下、「フリーランス法」といいます)。フリーランス法は、同法の適用対象となるフリーランスについて「特定受託事業者」(以下、単に「フリーランス」といいます)と定め、従業員を使用しない個人事業主などと定義しているため(同法2条1項)、個人事業者との取引が広く適用対象になる可能性があります。
そのため、本件の取引についても、フリーランス法の適用がある可能性が十分にありますので、契約解除を検討するにあたってもまずはこの点を確認することになります。
■口約束そのものが、法違反になり得る(3条)
本件の相談からは若干逸れますが、同法3条は、フリーランスに業務を委託した場合、直ちに、書面または電磁的方法により取引条件を明示することを義務づけています。明示すべき事項は、業務委託をした日、給付・役務の内容、納期、納品場所、報酬の額と支払期日などです。
この契約条件の明示については、書面だけでなく、電磁的方法として電子メールのほか、SNSのメッセージも認められています。そのため、契約書を用意できなくても、上記の事項を記載したメールを送っておくことで、フリーランス法上の義務を果たすことができます。逆にいえば、完全な口約束だけで取引をすることは、それ自体がフリーランス法違反になりますので、忘れず対応する必要があります。
■解除には30日前の予告が必要(同法16条)
本件においては契約解除が本題ですので、フリーランス法との関係では第16条が問題になります。同条は、6ヵ月以上の期間行う業務委託について、委託者側から契約を解除する場合または更新をしない場合、少なくとも30日前までに、書面・ファックス・電子メール等でその旨を予告しなければならないと定めています。また、予告後契約が満了するまでの間に、フリーランスから理由の開示を求められた場合は、遅滞なく開示することも義務づけられています。
したがって、本件においても、個人事業主との業務委託が6ヵ月以上の期間にわたるものである場合には、契約解除をするにあたり、上記の事前予告等の対応をしなければなりません。
なお、この事前予告については、例外事由が設けられており、その一つに「フリーランスの責めに帰すべき事由により直ちに契約の解除をすることが必要であると認められる場合」があります(フリーランス法施行規則(厚生労働省関係)4条4号)。この「フリーランスの責めに帰すべき事由」について、公正取引委員会及び厚生労働省は、「フリーランス法16条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なもの」と述べており、厳しい判断基準が示されています(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」〈令和6年5月31日、令和7年10月1日改正〉)。そのため、本件のようにフリーランス側に一定の落ち度があるように見られる事案であっても、即時解除を行うのには慎重になるべきです。
■ハラスメント対策も義務に(14条)
また、本件では、勤務態度に対する指導について、受託者から「パワハラ」「名誉毀損」という反発がなされているとのことですが、過度に恐れる必要はありません。
フリーランス法との関係では、確かに、同法14条は、委託者に対し、ハラスメントに関する相談対応の体制整備その他の必要な措置を義務づけていますので、委託者においてこのような措置を取ることは必要です。しかしながら、ここでパワハラとされているのは、「取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたもの」(同条1項3号)ですので、無断欠勤等を指摘して注意をしたり改善を求める程度であれば、これにあたりません。
また、名誉毀損についても、公然と事実を摘示することが要件となっていますので、単にメールや口頭で指導を行ったのみでは該当しません。
もっとも、受託者側からいわれのない主張をされる可能性は否定できませんので、受託者の勤務態度やそれに対する指導の経過を記録しておくのは有効です。
2026年1月、下請法は「取適法」に
もう一方の下請法についてですが、同法は、2026年1月1日に改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称:取適法)となりました。そして、この改正により、「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に呼称が変わるとともに、従来、親事業者あるいは下請事業者に該当するか否かの判断基準であった資本金基準に加えて、従業員基準(300人・100人)が追加される(同法2条8項・9項)など重要な改正がなされています。
本件においても、相談者が委託事業者に該当する場合には、取適法の適用にも留意する必要があります。
もっとも、委託事業者に該当する可能性のある企業は、資本金1,000万円超又は常時使用する従業員が100人超のいずれかに該当するものであり(同法2条8項)、本件の相談者に取適法が適用される可能性は高くないと思われます。また、取適法は、契約解除について正面から規制しているわけではありませんので、詳細は割愛します。

