価格・保有コストの安さから選ばれる「二輪車」
ケニアの首都ナイロビは他のアフリカ主要国と比べると涼しい気候のため、二輪車の普及は比較的進んでいなかったが、税制変更による価格低下や自動車よりも保有コストが低く済むなどの理由により2008年頃から普及が加速し始めた。
2013年には新規登録二輪車台数が自動車を上回り、それ以降も上回り続けている。ホンダは2013年9月よりケニアに新工場を稼働させており、南アフリカ、ナイジェリアに継ぐ3番目の現地法人を設立した。今後もさらに現地法人を増加させていくであろう。
「中間所得階級の増加」も後押しに
ケニアの市場は膨大なニーズと購買意欲が魅力であるが、脆弱なインフラや法令規制、通関の煩雑さが課題となっており日本企業が進出するにはハードルの高い国の1つとされてきた。
2010年以降、東アフリカ共同体(EAC)の域内統合が進み、周辺諸国との人・物等の自由な移動、労働政策、ビザの調和等が積極的に推進されている。ケニアの人々の収入面では中間所得階級が増加傾向にある。今後を担う若年層も人口の割合を多く占めており、成長市場もビジネスチャンスを大きく広げている。
ケニアでの人材育成に取り組み始めたトヨタ・ケニア
2014年7月、トヨタ・ケニアは人材育成センタートヨタ・ケニア・アカデミーを開所。自動車・二輪車の生産、流通、販売、アフターサービスを現地で行う中で付加価値をより高めるための事業に力を入れることが目的。
自社の事業を通じてケニアに貢献し、ケニアにおいて最も尊敬される会社を目指し、人材育成が最も重要であるとの観点から現地の人材を積極的に登用。マネジメント経験を積ませることをコンセプトとしている。
ケニア政府も人材の国際的な競争力向上を目指し様々な取り組みをする中、トヨタ・ケニア・アカデミーでは自動車・二輪車以外の技術者育成も行う予定。JICAや現地大学、政府機関からの協力のもと今後のアフリカ全体を担う人材育成に継続的に取り組む方針。
圧倒的安さが売りの中国メーカーが強力なライバル
二輪車でも中国メーカーは、積極攻勢をかける。日本勢も、旧来よりトヨタ東アフリカがヤマハを販売しており、2008年には、ホンダが代理店としてライス東アフリカを選定するなどの動きがあった。
しかし、中国メーカーの二輪車の圧倒的安さが、消費者を惹きつけている。1台当たりの価格は、日本メーカーが9~12万Ksh(ケニアシリング)に対し、中国メーカーは5~8万Ksh。
<注目企業の各国戦略>
●ホンダ自動車
2013年、現地法人ホンダ・モーター・サイクルケニアを設立。KDP(かんたん・どこでも・パック)と名付けた戦略をとっており、少ない費用で短期的に「町工場」を作っている。日本からのエキスパート指導員を短期的に呼び寄せ現地指導を行い、マニュアル化を徹底して現地でも質を落とさず作業の効率化を図っている。
●トヨタ通商
2013年現地にトヨタ・ケニアを設立。自動車、二輪車の輸入販売サービスを開始。現地社会に密着した事業投資を行っており、現地の技術者育成に力を入れている。
マネジメントの現地化を目標としており、人材バンクも設立し、優秀な技術者、管理者を他国に派遣する取り組みも始めている。