仕事翌日は夕方までソファに…70歳で「夜勤」をやめた理由
考えが変わったのは、70歳になって間もないころでした。
深夜まで乗務した翌日、正人さんは昼過ぎに目を覚ましました。特に体調が悪いわけではありません。
それでも何もする気になれず、夕方までソファで過ごしました。冷蔵庫を開けても食事を作る気にならず、近所のコンビニへ出たのは夜になってから。
「そこで、昨日も仕事で一日使って、今日も疲れて一日終わるんだなって思ったんです」
給与を得るために仕事を続けているのに、休みの日まで回復だけで終わっている。あと何年この働き方を続けるのだろうと、初めて考えました。
厚生労働省『令和7年版 厚生労働白書』では、2024年の65歳以上の就業者数は930万人で、就業者全体に占める割合は13.7%とされています。高齢期の就業が広がる一方、働き方を長く続けるためには、年齢や健康状態に応じた調整も必要になります。
正人さんは勤務先に相談し、夜間を含む働き方から昼日勤へ変更することにしました。当然、収入への影響はあります。
それでも家計を確認すると、年金月15万円に加えて一定の給与があれば、現在の生活費はまかなえる見通しでした。800万円の貯蓄も、すぐに使い切る状況ではありません。
「今まで、収入を減らさないことばかり考えていました。でも70歳になって、貯金を増やすために働いているわけでもないよなって」
現在は朝から夕方までの乗務が中心です。
夜の繁華街で長距離の客を待つことはなくなりました。その代わり、病院へ向かう高齢者や買い物帰りの客、仕事で移動する人などを乗せています。
収入は以前より減りました。
一方、仕事が終わったあとに夕食をとり、夜に眠る生活に戻りました。休日も朝から動ける日が増えています。
「仕事はまだ辞めたくないんですよ。運転も好きですし、お客さんと話すのも嫌いじゃない。ただ、夜まで働いて稼ぐ必要はもうないかなと思ったんです」
正人さんが手放したのは、仕事そのものではありません。
年金生活になってから抱えていた「できるだけ収入を減らしたくない」という不安から、70歳になって働き方を一段階変えました。
老後も働き続けるなら、何歳まで働くかだけでなく、どのように働くかを見直す時期も訪れます。正人さんにとって昼日勤への変更は、仕事をやめるためではなく、むしろ無理なく続けるための選択でした。
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