「お金は増える。でも、このままでいいのか」
俊哉さんが実家暮らしを続けてきた最大の理由は、経済的なメリットでした。
仮に一人暮らしを始めれば、家賃だけで月7万円前後。さらに水道光熱費、通信費、食費などもかかります。実家なら毎月5万円を家に入れるだけ。浮いたお金を貯蓄や投資に回してきたからこそ、4,800万円という資産を築くことができました。
「このまま実家にいれば、資産はもっと早く増える。それはわかっています。でも、甥っ子に言われたことが頭から離れなくて……」
そして俊哉さんは、こう考えるようになりました。
「自分には、実家にいなきゃいけない理由があるのかなって。『お金が貯まるから』『楽だから』というのが大きかった。それなら、生活を変えてみてもいいんじゃないかと思ったんです」
実際に俊哉さんは一人暮らしを始め、現在は時々実家に帰る生活に切り替えました。
「多少、お金を貯めるペースが遅くなっても、自分で生活できる人間になったほうがいいのかなって。今のほうが、甥っ子や姪っ子にも引け目を感じずに会えるんです」
さらに、一人暮らしを始めて思わぬ発見もあったといいます。
「食事も洗濯も掃除も、親にかなり頼っていたんだなと。一人になってみて、初めて気づきました」
実家暮らしは合理的だが…年齢を重ねると起きる「変化」
実家暮らしを選ぶことは、今や決して珍しいことではありません。住居費を抑え、その分を貯蓄や投資に回すことは、資産形成という面でも合理的な選択です。
実際、LIFULL HOME'Sが2025年に実施した実家暮らしに関する調査では、「実家暮らし」と答えた人は20代で37.7%、30代・40代でともに26.4%と約3割を占めており、「今後、実家を出る予定や意思があるか」という質問では、「ない」と回答した人が20代で44.3%、30代で52.5%、40代では70.3%に達しています。
もちろん、こうしたデータだけで「実家に住み続けている=自立する気がない」と一括りにはできません。しかし、少なくとも「実家暮らしを親子双方がどう捉えているか」という点のすり合わせは必須です。
一方で、年齢を重ねれば、親子それぞれの生活環境や家族関係も変化していきます。親が高齢になれば、自分が親を支える側になることも考えなければなりません。
「家賃がもったいない」「実家ならお金が貯まる」といった経済面だけで判断するのではなく、「親に生活を支えてもらっている部分はないか」「家事や身の回りのことを、どこまで自分でできているか」「親が高齢になったとき、自分はどのような役割を担うのか」といった点も、一度考えてみる必要があるでしょう。
実家暮らしが悪いわけでも、一人暮らしが正解というわけでもありません。俊哉さんの場合、4,800万円という資産を築いたことで、すでに実家にいなければ将来が不安という段階からは抜け出していました。
資産を増やすことだけを目標にするのではなく、この先どんな暮らしをしたいのか、家族とどんな関係でいたいのか――。40歳という節目で、そんなことを考えるタイミングが来たのかもしれません。
参考:株式会社LIFULL 「実家暮らし」に関する調査(2025年)
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