親も子も話しにくい「相続の話題」
子どもから「相続の話をしたい」と言われた親は、「お金目当てなのか」「死ぬのを待っているのか」と感じてしまうかもしれません。
一方、親も「相続のことを考えなければ」と思っていても、子どもに切り出すのは簡単ではありません。「まだ早い」「縁起でもない」と先延ばしにしがちです。
結果として、誰も、何も行動を起こさないまま時間が過ぎてしまいます。実際、私がお手伝いする案件のほとんどは、「本当に困った状況になってから」の相談です。親が弱ってから、認知症の症状が出てから、あるいは相続が起きてからの相談が大半を占めます。
でも、その状況になってからでは、できることが限られてしまうのです。
第三者を介在させることが重要
だからこそ、間に入る第三者が必要です。私たちのような専門家が間に入ることで、親子では話しにくい内容も自然に話し合えるようになります。理想的なのは、親子で一緒に専門家の話を聞くことです。セミナーに参加したり、個別相談を受けたりすることで、同じ情報を同じ場所で共有することができます。
別々に相談してしまうと、一方からの話しか相手に伝わらず、話がかみ合わなくなることも多いです。親から相談を受けた専門家は親の立場で答えますし、子どもから相談を受けた専門家は子どもの立場で答えるからです。
同じ場所にいて、同じ人から話を聞くことで、共通の認識が生まれるのです。
意外なところに情報が…専門家を見つける方法
「そんな専門家をどこで見つければいいの?」という声が聞こえてきそうです。
実は、身近なところに情報があります。お住まいの区や市の広報誌を見てみてください。「相続無料相談会」「終活セミナー」といった案内が掲載されていることが多いです。
私も世田谷区報に広告を出し、司法書士、弁護士、税理士などの方々と一緒に定期的に相談会を開催しています。毎回多くの方にご参加いただいています。図書館や公民館、地域の集会所などでも相続関連のセミナーが開催されることがあります。まずは、こうした地域の情報をチェックしてみましょう。
大切なのは、「色のついていない」専門家を選ぶことです。銀行に相談すれば銀行の商品をすすめられますし、ハウスメーカーに相談すれば建築の話になりがちです。
できるだけ中立的な立場の専門家を選んで、まずは親子一緒に話を聞いてみることをおすすめします。
話のきっかけ作りのポイント、3つ
では、具体的にどうやって親を誘えばいいのでしょうか。
・知人の話を例に出す
「〇〇さんが相続で大変だったみたい。うちは大丈夫かしら」という形で話題にできます。他人の話なら、親も身構えることなく聞いてくれるでしょう。
・新聞記事やテレビ番組を利用する
相続に関するニュースを見た時に、「こんなトラブルもあるのね。うちも準備しておいたほうがいいかしら」と自然に話題にできます。
・軽い気持ちで誘う
「面白そうなセミナーがあるから、一緒に行ってみない?」「無料の相談会があるから、話だけでも聞いてみない?」
こんな軽い気持ちで誘ってみましょう。「勉強になりそう」「興味深い」といった表現を使うと、相手も参加しやすくなります。
話し合いで避けたい表現
親との相続の話では、できれば使わないほうがいい表現もあります。
「万が一の時」「もしもの場合」という曖昧な表現は、具体的な話し合いにつながりません。また、「心配だから」という理由は、「自分は心配されるほど弱っているのか」と親を不安にさせてしまう可能性があります。
「遺産」「相続税」「遺言書」といった直接的な言葉も、親に「死」を連想させてしまうため、最初は避けたほうが無難です。
代わりに、「将来のことについて一度、きちんと話し合いませんか」「大切な家のことを教えておいて」といった、より自然な表現を使いましょう。
急がず、焦らず、継続的に
一度の話し合いですべてを決める必要はありません。時間をかけて、少しずつ進めていけばいいのです。
親が嫌がることは無理強いせず、親のペースに合わせることが大切です。元気なうちに少しずつ準備をしておけば、いざという時に慌てることがありません。「あの時話し合っておいてよかった」と思える日が、きっと来るはずです。
高橋 大樹
不動産相続アーキテクツ株式会社
代表取締役・宅地建物取引士・一級建築士
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