「スイスの銀行なら秘密は守られる」は過去の話?フランスが求めたUBS「口座情報」開示の経緯【国際税務の専門家が解説】

「スイスの銀行なら秘密は守られる」は過去の話?フランスが求めたUBS「口座情報」開示の経緯【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

 「顧客の秘密は絶対に守る」——そう信じられてきたスイスの銀行に、いま大きな風穴が開いています。スイス最大手UBSを舞台に、米国とフランスがそれぞれ繰り広げた口座情報開示をめぐる攻防の結果、約4万人分の顧客データがフランスへ引き渡されるという衝撃の判決が下りました。100年近く守られてきた「秘密主義」はなぜ崩れたのでしょうか。国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏が解説します。

FATCAとAEOIの導入

しかし、UBSにある米国人口座52,000のうち一部のみの公表には米国側も不満で、2010年3月18日に、オバマ大統領の署名により「外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act:FATCA)」が成立しました。

 

この法律は、外国銀行にある米国居住者の口座情報を米国に報告するという内容であり、FATCA成立を契機として、OECDを中心に各国の金融機関が金融口座情報自動的交換報告制度(AEOI)を導入し、2018年以降、交換を開始しました。スイスも国内で議論がありましたが、最終的にはAEOIに参加しています。

フランスとUBSの事件

フランスとスイスの事件は、2016年5月に、仏税務当局がスイス連邦納税事務局に、スイス在住または過去に住んだことのあるフランス人についてのUBSにある口座に関する詳細な履歴の提供を求めたことに始まります。

 

2018年2月に納税事務局は共助に応じることを決定しましたが、UBSは口座所有者と連名で、連邦行政裁判所に異議を申し立てました。行政裁判所がUBS側の訴えを認めたのを受けて、納税事務局が行政執行共助をめぐる詳しい判断を求めて連邦裁判所に上告しました。

 

この背景には、UBSとフランスにある同行支店が2004~2012年に行われた脱税資金の洗浄を助けたとして訴えられたことがあります。

 

2019年2月には、同訴訟において、UBSは顧客の脱税をほう助したとして、仏裁判所により37億ユーロ(約4,000億円)の罰金支払いを命じられました。2021年3月26日に、スイス連邦裁判所は、UBSにある約4万人の顧客に関するデータをフランスの税務当局に引き渡すべきであるとの判決を下しました。

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