「来年は3泊くらいでいいかな」帰った翌日に夫婦が話したこと
8泊9日の最終日。健太さん一家を駅まで送り、家に戻ると、驚くほど静かでした。
洋子さんは布団を片づけようとしましたが、隆夫さんが「今日はもう何もしなくていいよ」と止めました。
その日の夕食は、冷蔵庫に残っていた豆腐と漬物、総菜だけ。
「久しぶりに適当なご飯でいいと思ったら、すごくほっとしました」
今回の帰省で特に大変だったのは、お金よりも生活のペースだったといいます。
もちろん出費も増えました。外食や食材、孫とのレジャーなどを合わせると、普段より10万円近く多く使っていました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月の消費支出は平均26万3,979円。そのうち食費は29.9%を占めます。普段2人で暮らす世帯に家族が長期間滞在すれば、食費をはじめとする支出が一時的に増えることも考えられます。
ただ、隆夫さん夫婦にとって10万円は、家計を大きく揺るがす金額ではありませんでした。朝起きる時間、食事、風呂、テレビを見る時間まで、9日間ずっと誰かに合わせていたことのほうが堪えました。
翌朝、コーヒーを飲みながら隆夫さんが言いました。
「来年は3泊くらいでいいかな」
洋子さんも「私もそう思ってた」と笑いました。
それから健太さんに電話した際、洋子さんは「来年も帰ってきてね。でも、お母さんたちも年を取ったから、今度はそんなに長くなくていいよ」と伝えました。
すると健太さんは、「やっぱり疲れたよね。こっちも甘えすぎたかも」と答えたそうです。
実際には、健太さん夫妻も食器を洗ったり、外食代を負担したりしていました。夫婦だけに家事を押しつけていたわけではありません。
それでも、迎える側には「せっかく来たのだから」という気持ちがあります。その気遣いが積み重なれば、本人たちも気づかないうちに負担が大きくなることがあります。
内閣府の同調査では、子どもとの同居・近居を希望する高齢者が挙げるメリットとして、「子や孫の世話ができる」は27.0%でした。家族の近くで暮らすことや孫と関わることに価値を感じる人がいる一方、どの程度の関わりが心地よいかは人によって異なります。
子や孫が帰ってくることを楽しみにする気持ちと、普段の静かな暮らしに戻りたいと思う気持ちは、どちらかが本音で、どちらかが嘘というものではありません。
年齢を重ねれば、以前なら平気だった数日間の家事や外出が負担になることもあります。帰省する側も迎える側も、「何泊なら無理なく楽しめるのか」「食事や家事をどう分担するのか」をその都度変えていくことが、家族との時間を長く楽しむことにつながるのかもしれません。
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