息子が初めて知った79歳母の節約生活
浩二さんが詳しく聞くと、節子さんはようやく家計のことを話しました。
月12万円ほどの年金から、管理費や修繕積立金、光熱費、食費、通信費などを支払います。息子への10万円は貯蓄から出していましたが、節子さんは「できるだけ貯金を減らしたくない」と考え、自分の日々の生活費を年金の範囲に収めようとしていたのです。
友人との外食は減らし、衣服もほとんど買わず、家電の買い替えも先延ばしにしていました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯では、月の可処分所得は平均11万8,465円、消費支出は14万8,445円で、平均では消費支出が可処分所得を約3万円上回っています。
「俺に10万円送るために、こんな生活してたの?」
浩二さんが尋ねると、節子さんは否定しました。
「あなたに送る分は貯金からだから、食べるものまで減らさなくても大丈夫なの。でも、毎月10万円ずつ貯金が減っていくのを見ると、私も使っちゃいけない気がして」
15ヵ月で仕送りした金額は150万円に達していました。
浩二さんは、そこで初めて自分が受け取っていた10万円を母親の「余っているお金」のように考えていたことを後悔したといいます。
「最初は半年という話だったのに、振り込まれるから受け取っていた。母が大丈夫と言うから、本当に大丈夫なんだと思おうとしていたんでしょうね」
浩二さんは翌月から仕送りを断りました。
すぐに希望通りの正社員になれたわけではありません。まずは収入を確保するため、それまでより勤務日数の多い契約の仕事を始め、家賃の安い部屋への転居も検討することにしました。
節子さんには「自分のために使って」と伝えました。
内閣府の同調査では、60歳以上が今後優先的にお金を使いたいものとして、「自分や配偶者等の医療・介護」が47.5%、「食費」が43.2%となっています。一方、「子や孫のための支出」は25.8%です。
親が成人した子どもの生活を支えること自体は、それぞれの家庭の判断です。しかし、年金生活に入った親からの継続的な援助は、親自身の老後資金を減らすことにもつながります。特に一時的なつもりで始めた援助は、終わりを決めないまま続くこともあるでしょう。
支援する側が「大丈夫」と言っていても、どの資金から出しているのか、いつまで続けられるのかは別の問題です。親子だからこそ、一方が無理をして支え続けるのではなく、期間や金額を含めて互いの生活を確認することが必要です。
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