30年以上連れ添った妻と離婚…64歳で始めた団地暮らし
正志さん(仮名・66歳)が離婚したのは、64歳のときでした。
元妻とは30年以上の結婚生活を送り、2人の子どもはすでに独立。正志さんは60歳で定年を迎えたあとも再雇用で働き、元妻も長くパート勤務を続けていました。
夫婦仲が険悪だったわけではありません。ただ、子育てが終わったころから、会話は少しずつ減っていました。
正志さんは休日になると家で本を読んだり、近所を歩いたりして過ごすのが好きでした。一方、元妻は友人との旅行や習い事に出かけることが多く、食事も別々に済ませる日が増えていたといいます。
「同じ家に住んではいたんです。でも、もう何年もそれぞれの生活をしているような感じでした」
決定的な出来事があったわけではありません。きっかけになったのは、正志さんが再雇用を終える時期について話していたときでした。
元妻から「仕事を辞めたあと、毎日どうするの?」と聞かれ、正志さんも逆に、「この先もずっと、この家で2人で暮らすのかな」と考えるようになりました。
何度か話し合った末、元妻から「一度、それぞれで暮らしてみたい」と提案されます。
半年ほど話し合いを続け、64歳で離婚。長年暮らした持ち家は売却し、住宅ローンの残債を精算したうえで財産を分けました。
正志さんは自分の取り分と預貯金を合わせ、約2,000万円を手元に残しました。
当初は中古マンションの購入も考えましたが、「この年齢でまた家を持つ必要があるのか」と迷い、最終的に選んだのは郊外にある賃貸の団地でした。
築年数は経っていますが、2DKで家賃は月5万円台。駅まではバスで10分ほどで、徒歩圏にスーパーとドラッグストアもあります。
以前の一軒家と比べれば、広さは半分以下です。それでも、初めて部屋を見た正志さんは「一人なら、これくらいで十分だな」と感じたそうです。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上で一人暮らしをする人の割合は増加しており、男性では1980年の4.3%から2020年には15.0%となっています。今後も上昇が見込まれ、2050年には26.1%に達すると推計されています。
