待っていた電話は来なかった…娘との会話で気づいたこと
それからしばらく、洋子さんから美咲さんに連絡することはありませんでした。入学式が終わっても、「どうだった?」とは聞きませんでした。
そんな母の様子に気づいたのは香織さんです。電話で「最近、美咲に連絡してないでしょう」と言われ、洋子さんは初めて本音を漏らしました。
「別に怒ってはいないよ。でも、電話くらいくれるかなと思って待ってたの」
香織さんは少し驚いた様子で、「あの子、メッセージを送ったから、それでちゃんとお礼を言ったつもりだったと思うよ」と答えました。
さらに話を聞くと、美咲さんには、祖母が大学進学のために援助してくれたことは伝えていたものの、50万円という具体的な金額までは知らせていなかったといいます。
洋子さんにとって50万円は、年金3ヵ月分を超えるまとまった金額でした。それだけに、振り込んだときから、孫が電話をかけてきて「ありがとう」と言ってくれる場面を自然と思い描いていたのです。
一方の美咲さんは、祖母から進学のお祝いをしてもらったことに感謝し、メッセージでその気持ちを伝えていました。そこに悪気があったわけでも、援助を当然だと思っていたわけでもありません。
「そうか。あの子はあれでお礼を言ったつもりだったのね」
香織さんとの電話を切ったあと、洋子さんは少し拍子抜けしたといいます。
後日、美咲さんから「大学の授業始まったよ」と写真付きのメッセージが届きました。洋子さんも「楽しそうでよかった。頑張ってね」と返しました。
待っていた「ありがとう」の電話は、結局ありませんでした。それでも以前のような寂しさは残らなかったそうです。
「美咲が冷たかったわけじゃなかったんです。私が勝手に電話を待って、勝手に寂しくなっていたところもありました」
洋子さんはその後、孫への援助について少し考え方を変えました。これからも進学や就職などの節目には、できる範囲でお祝いをしたいといいます。ただ、何かをしてあげたあとに「これくらい喜んでくれるはず」「こういうお礼があるはず」と期待するのはやめようと思うようになりました。
「もちろん、『ありがとう』って言われたらうれしいですよ。でも、電話がなかったからって、私を大事に思っていないわけじゃないんですよね」
自分がしてあげたいことと、その見返りとして相手に期待することは分けて考える。今回の出来事をきっかけに、洋子さんは孫との付き合い方をそう捉えるようになったといいます。
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